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一首を切り裂く(094:彼方)

(夏実麦太朗)
    そのかたち自由自在に変えながら空の彼方へ行くレジ袋

 「レジ袋」は「そのかたち」を「自由自在に変えながら」「空の彼方へ行く」のではなくて、<自由自在に変えられながら>空の彼方へ行くのである。 
 その昔は、材料がポリエチレンであることから<ポリ袋>と呼ばれていた例の「袋」の呼び名が、昨今では、「レジ袋」と呼ばれるようになった。
 つい最近、私が、この袋のことを、レジ袋では無く<ポリ袋>と呼んだら、「そんな言い方をしたら、警察官が持っている袋と間違われるから、ここは偏見を捨てて、ポリ袋と呼べよ」と嗜められた。
 そういうことですから、「レジ袋」という、この呼び名は、このまま定着してしまうに違いない。
 材料がポリエチレンでなくなっても、呼び名を変更する必要が無いからでもある。
 ところで、昨年辺りは、エコ社会に対応するためにレジ袋の廃止運動が盛んに行われような気配を見せていたのだが、いつの間にかその運動も凋んでしまった。
 作中の「レジ袋」の行方も気になるが、<レジ袋廃止運動>の行方はそれ以上に気になる。
     〔答〕 そのかたち勝手気ままに変えられて風に漂うレジ袋かも  鳥羽省三


(小早川忠義)
    出会ふ前のまたは離れてしまひたる友とは何の彼方にをらむ

 「離れてしまひたる友」は、今はともかく、離れる前には紛れも無い「友」であったのだが、「出会ふ前」の「友」は、まだ出会っていないのだから常識的には「友」とは言えない。
 それなのに「友」と呼んでいるところに、本作の作者のロマンティズムが認められる。
     〔答〕 山の穴 山のあなたの空遠く 未だ出会わぬ友が住むのか  鳥羽省三
 拙作の冒頭の「山の穴」については、今さら解説を要さないであろう。
 

(佐藤羽美)
    彼方まで気球観測しておりぬ妹に深い渓谷のあり

 作中の「妹」の胸の中に存在する「渓谷」は深くて広い。
 故に、妹は「彼方まで気球観測して」いるのである。
 気宇壮大は、何も男子の気構えの大きさだけを形容する語句ではない。
     〔答〕 彼方までアドバルーンなどぶち揚げて誰の渓谷覗くのか鳥羽  鳥羽省三 


(虫武一俊)
    彼方から髭のひとりも現れてあきらめなさいと言ってくれぬか

 「髭のひとり」の誰彼を、いろいろと詮索してみるのが面白い。
 髭と言えば、大国主命の髭、聖徳太子の髭、明治天皇の髭、伊藤博文の髭。
 彼らは、髭の所有者なるが故に紙幣の図柄となっているのだ。
 髭の彼らを図柄とした日本銀行券は、「鳩山くん、マニフェストの実現は、もうあきらめなさい」と言ってくれるのだろうか?
     〔答〕 髭立てず腹も立てずに鳩山の由紀夫は何時まで持つのだろうか  鳥羽省三


(振戸りく)
    此方から彼方に変わる瞬間の場所と時間を教えてください

 私の連れ合いは、夜遅くまでテレビを観ていたりしている時、時計が十二時を回ると、「ああ、もう明日になってしまった。いや、間違った。今は今日であって明日ではない。私たちは明日という日に巡り会うことが、永久に出来ないのだ」などと言って洒落めかす。
 そう、我が連れ合いの言うが如く、「明日」は「今日」を基準としての「明日」であって、今日になってしまえば、それは明日では無いのである。 
 それと同じように、「彼方」は「此方」を基準としての「彼方」である。
 故に、「彼方」に行ってしまえば、其処は「此方」であって「彼方」ではないのである。
 だから、此方と彼方の境目となる「場所」や「時間」を特定することは永久に不可能である。
 ところで、昨今の世間では、<元カレ>という変な言葉が跳梁跋扈している。
 その<元カレ>とは、<現役の彼氏>に対しての<退役の彼氏>を指して言う言葉であろうが、そもそも、彼女の対象者であるところの男性は、あくまでも<彼氏>であり、世間には、<現役の彼氏>の略語としての<現カレ>と言う言い方は無いから、それと相対的な関係になる<元カレ>という言い方は成立しないはずである。
 成立しないはずの言葉<元カレ>を成立させるために、世間の馬鹿どもは、その相対語として、最近、<今カレ>という、<元カレ>に更に輪を掛けたようにして意味不明な言葉を急浮上させ出した。
 自分の居る時間軸が常に<今日>であるように、彼女と相対する者は、常に<彼>ないし<彼氏>である。
 だから、<今カレ>とか<元カレ>とかいうような言葉を、何の疑問も無しに使っている者は馬鹿としか言えない。
 仮に、<カレ>という言葉の対義語がどうしても欲しいのならば、それは、<元カレ>では無くて<非カレ>であろうか。
    〔答〕 今日明日の狭間と言うと思い出す江川卓の空いた一日  鳥羽省三 


(五十嵐きよみ)
    忘却の彼方ですけどリカちゃんと昔はおなじ年齢でした

  フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』からの引用であるが、「リカちゃん(Licca-chan)はタカラ(現タカラトミー)製の着せ替え人形玩具。フルネームは香山リカ(Licca Kayama )。日本人らしい身長や顔立ちで、親近感が沸くように作られている。累計出荷数は5000万体を超える」、「誕生日:5月3日/年齢:11歳(小学5年生)/血液型:O型」である。

 本作の作者の五十嵐きよみさんが、「リカちゃん」と「おなじ年齢」であったのは、一体、何年前のことであろうか。
 <十年ひと昔>という言葉が在るが、その言葉に従えば、五十嵐きよみさんは、ひと昔やふた昔では無い、ずーっと、ずーっと昔のことを話しているのである。
 ことの序でに、例の知ったかぶりで、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から仕入れた知識を披瀝すると、日本人とフランス人との間に生まれたハーフとして設定されたリカちゃんは、当時、ハーフの少女タレントとして人気絶頂だった、高見エミリさん、現在の鳩山エミリさんをモデルとして設定されたのだそうだ。
 だとすれば、現役宰相の実弟の鳩山邦夫氏は、友だちの友だちがアルカイダだったり、お母さんから数億円を貰ったり、奥様がリカちゃん人形のモデルだったりして、現代、類い希な幸せ者であろう。
     〔答〕 往年のリカちゃん人形のモデルさん今の首相の義理のいもうと  鳥羽省三


(近藤かすみ)
    雲間より光の降りて山の端の彼方に見ゆる天使の梯子

 五十嵐きよみさんがリカちゃん人形を語れば、近藤かすみさんは「天使の梯子」を語る。
 共に、叶わぬ夢を語りたくなるようなご年配であられましょうか?
 でも、「雲間より光の降りて」来ることもありましょうから、今年一年、またがんばって下さい。
 近藤かすみさんが撤退してしまえば、「題詠2010」は闇夜になりましょうから。
     〔答〕 闇を行く想いしながら歌を読む時折り出会う秀歌頼みて  鳥羽省三


(蓮野 唯)
    鼻先で閉じた扉が語ってる心はとうに彼方へ去った

 こちらは、リカちゃん人形とも天使の梯子とも、縁もゆかりも無い蓮野唯さんの作品でありますが、少々意味の解り難いところが在ったとしても、それは尻取り短歌のせいでありますから、勘弁していただきましょうか。
 それにしても、その「先」で扉を閉じられるくらいの「鼻」とは、一体どんなに高い鼻なんでしょうか?
 その正確な寸法は分かりませんが、そんなに高い鼻の持ち主だから、貴女は彼に逃げられるんですよ。
 「心はとうに彼方へ去った」などと、ふて腐れて居ないで、そんな鼻などは自分でへし折って、大急ぎで彼を探してきて、もう一度彼とやり直しなさい。
 決して、諦めてはいけません。
 彼は案外近くにいるのですから。
 目と鼻の先に。
     〔答〕 鼻先で笑っていても泣いているとうの彼方に去った心が  鳥羽省三


(今泉洋子)
    瑠璃色の空の彼方にむなしさをひとつおきさり闌けてゆく秋

 こちらの作者は、お年も欲望もお忘れになられたお方の作品である。
 でも、ご本人のご力量から推してみて、いかにも投げやりな作品と思われ、「題詠」全盛の新古今時代に紛れ込んだような感じが致します。
     〔答〕 投げ遣れば実も蓋も無きダイエーの特価売り場に買ふ物のなし  鳥羽省三


(ほたる)
    彼方より空耳がしてスキップで渡る横断歩道の鍵盤

 しんがりは、お年に不足(?)のほたるさん。
 だんだら模様の「横断歩道」をピアノの「鍵盤」に見立てたのが、この作品の手柄でしょう。
 それで以って、初めて、「スキップで渡る」という表現も生きて来るのである。
 意識したり計算したりしないで、そうした効果的な表現が出来る所に、本作の作者の強みがある。
     〔答〕 彼方には蛍狩りの児まっている摑まえられて一夜光りな  鳥羽省三
        蛍狩りは子供では無く大人にて尻を剥かれて光らせられた   同
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No title

こんにちは

たびたび採りあげていただきましてありがとうございます。

たしかに、
「変えながら」より「変えられながら」の方が正しいですね。
でも、歌を変えるつもりもありませんが、、、(^_^;


No title

  鳥羽省三様
 鋭いご指摘に感服いたしました。いつも言い訳がましいですが、投稿してから、甘かったなどおもいましたがあとのまつりでした。小道具を揃えすぎたのと、既視感があるような常套的、ゴールをいそいでか安易に投稿したのを見破られてしまいました。さすが鳥羽先生。深い評を頂きありがとうございました。
 
 鑑賞のほうゴールされたみたいで、大変お疲れさまでした。
自分に気合いをいれるために早々と今年の題詠の参加表明をしました。今年こそ一首一首丁寧に詠んでいきたいと思います。今後とも、お見捨てなくご指導をお願い致します。

☆鳥羽短歌大明神さまの言葉沁む今宵は御神酒を熱くつけやう

カレ

彼方と此方が元カレと(現)カレにたとえられるとは意外な驚きです。

彼方と此方は空間と時間が絡む間柄だと思っています。
そのあたりをついてくださってありがとうございました。
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鳥羽省三

Author:鳥羽省三
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