スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

一首を切り裂く(089:テスト)

(チッピッピ)
    寝過ごしてテスト勉強できてない今も夢見るこんな歳でも

(髭彦)
    亡き母の八十路を過ぎてうなされきあはれあはれよテストの夢に

 ご本人とご本人のご尊母様との違いはあるが、二首とも「テスト」「テスト」、「テスト」にまつわる「夢」の話である。
 お勉強が出来る者でも出来ない者でも、テストに苦しむ夢を見るのは古今東西少しも変わらないらしい。
 ああ哀れ、哀れ哀れよ、テストの夢よ。
 学生生活からおさらばしてから半世紀近くにもなるが、私もまたテストの夢をよく見る。
 但し、それはテストをされる側の者としての夢では無く、する側の者としての夢である。
 自慢では無いが、私はテスト問題を創ることが大好きで、かつ上手であったことを自負している。
 定期テストの実施時期が近づくと、どの学校でも職員室の中が急に慌しくなる。
 数多い教師の中には、自前のテストを創るような能力が無くて、生徒に買わせている問題集の中から、その時期の学習進度に適合した問題を探そうとして躍起となっている者や、かねてよりストックしてある過去問などから出題するに相応しい問題を探すのに四苦八苦している者が居るからである。
 私は国語担当教師であったが、私と同じ国語教師の中には、「問一」は<書き取り>の問題、「問二」は<振り仮名>の問題、「問三」は<接続詞や副詞などの穴埋め>問題、そして、「問四」もまた形を変えた<書き取り>問題、それで合計点数・百点満点、などというような無能を絵に描いたような教師も居たのだ。
 しかも、長い教員生活の中で、そうした教師と一人か二人出逢ったと言うのならまだしも、一つの高校に数年勤務して別の高校に転勤すると、其処にも亦、そういう教師が一人か二人居て、三十五年の教壇生活の中で、そういう国語教師を十人以上も、私は同僚として持っていたのである。
 比較的に文章を書くことが上手なはずの国語教師にして、このテイタラク。
 他の教科担当の教師は推して知るべし。
 数学担当の教師の中には、生徒に買わせている問題集の中から、適当な問題を探し出し、その中の数字を少し換えて出題したら、正解が無くなってしまい、テスト終了後に生徒から吊るし上げを食った挙句、「その問題は全員正解」などという狡い手を使って教師の面目を保った、などという奇特な先生様も決して珍しくは無かったのである。
 そうした環境に棲息していて、私は悠々自適の毎日を送っていた。
 何しろ、テスト問題を捻り出すことが「好きで好きで大好きで、死ぬほど好きな」テストと心中しようとさえ思ったくらいなのだから。
 そんなテスト好きの私ではあったが、定年退職後しばらくして、夜寝て見る夢の中にテストが現れるようになったのだ。
今日の二時間目に、私の担当する現代国語のテストが実施されるが、肝心の作問がまだ未完成で苦しんでいる。
 やっと終わって、朝一番に飯も食わずに勤務先の学校に行って印刷しようとしたら、印刷機が壊されていた。
 そんな夢をこの数年間に十数回も見たのである。
 やはり、何処かに無理が在ったのかも知れません。
 上掲の作品について述べると、二つの作品とも、作者としては、「ここは軽く流しておこう」という気分で創った作品のようではあるが、それなりのリアリティーが感じられ、作者たちの安定した力量も窺われる。
     〔答〕 夕べ見た夢の中にも現れて用紙の裏に糞(ばば)がついてた  鳥羽省三


(石畑由紀子)
    教室の窓からすらり離陸したテスト用紙が彼女の答え

 こちらもまた<テスト恐怖症候群>の患者さん。
 しかし、こちらは、夜に寝て見るそれでは無くて、白日夢のそれ。
     〔答〕 天空から大きな翼が現れて紙飛行機を銜えて去った  鳥羽省三


(マトイテイ)
    本日はテステスこちら大丈夫マイクテストに気持ち隠して

 毎年、体育会や文化祭の時期になると、普段は準備室の中で昼寝ばかりしている物理教師が鎌首を擡げて活躍する。
 「えー、テステス。こちらは体育祭本部。本日は晴天なり。本日は晴天なり。エー、テステス。ただいまマイクのテスト中です」などと。
 あの物理教師も、「テステス」という、とぼけたような寝ぼけたような声の中に、何らかの気持ちを隠していたのだろうか?
     〔答〕 「テステス」とマイクに向かって叫ぶヤツ テスト作りの苦手な教師  鳥羽省三 


(羽うさぎ)
    おだやかなプロテストとしてワイシャツに白マジックでハートを描く

 「おだやかなプロテストとして」と言うよりも、「穏やか過ぎて」何を主張したいのか分からない「プロテスト」では御座いませんか?
 でも、一口に「ワイシャツ」と言ったって、最近の「ワイシャツ」は、色色さまざま。
 黒い布地や赤い布地の「ワイシャツ」に、「白マジックでハートを描」いたら、「私たち、後期高齢単身者介護施設の利用者にも、恋愛の自由、結婚の自由を認めよ。コチコチ頭の介護福祉士はこの施設から去れ。友愛の尊さも弁えていない理事は、この施設の経営から手を引け」といった「プロテスト」の内容は十分に読み取れることでしょう。
     〔答〕 爽やかなプロテストとして白シャツにみどりのインクで新緑を刷る  鳥羽省三


(おっ)
    いつまでもサシスセソだけ言えなくていつもお風呂でテストされてた

 <サ行音>は確かに発音し難い。
 いつも一緒にお風呂に入って、「サシスセソ」テストをして呉れたのは、お母さんでは無く、きっとお父さんだったに違いありません。
 「おっ、でかした、でかした。お母さん、<おっ>君が、<サシスセソ>を、早口で間違いなく言えるようになったぞ。<おっ>君の今夜のおかずに、もう一枚、コロッケを加えてやれ。<サシスセソ>を早口で言えるようになったお祝いだから。」
     〔答〕 晩熟(おくて)にて<アイ>は言えても<サシスセソ>さしも出来ずに掻いてばっかり  鳥羽省三 


(桑原憂太郎)
    ナイターを英語科備品のラジカセで聴きつつテストの採点をする

 「英語科備品のラジカセ」で「ナイター」を聴いている教員が、私の過去の同僚にも一名居ましたよ。
 その教師は、某国立大学の付属高校から某国立大学の英語専攻科を出たことを誇りにしていて、定期試験の他に、隔週一度は必ずテストをやり、その結果を廊下に張り出すというアナクロいことをやっていたから、勉強嫌いの生徒たちからは、蛇蝎の如く嫌われていた。
 で、その教師は、三十歳を過ぎても母親と二人暮らしであった。
 そこで、彼は自宅から小型の冷蔵庫や電気炊飯器や寝袋まで持って来て、英語科の準備室を自分の塒のようにして使っていたのだ。
 放課後になると、彼は買い物袋を抱えて街に出かける。
 レタスやハンバーグやトマトなど、今晩食べる食料の買い出しに行くのだ。
 そういう訳で、彼の評判は、生徒からも教師仲間からもさんざんであったが、私だけは、彼の悪口をただの一言も言ったことが無かった。
 何故ならば、彼が担当すると、受け持ちクラスの生徒の英語力が確実にアップするからである。
 ある年の二学期の中間試験期間中に、教員が二チームに分かれてソフトボール大会をやった。
 その大会で、私はクリーンヒットを三本も放ち、自分では密かに、この大会のMVPは自分だと思い込んでいた。
 ところが、試合後の宴会の席上では、そうした私の活躍振りは少しも話題とならずに、出場した者がそれぞれ、「あの試合のMVPは俺だ。何故ならば、俺の速球には誰も手が出なかったからだ」「いや、この私こそ最高殊勲選手だ。何故なら、あの時の好走塁が勝利打点に結びついたのだから」などと、飲んだ勢いで勝手に気炎を上げているのだ。
 そうしたことで宴会の座がかなり乱れ始めた頃、例の英語教師が急に立ち上がって、「チャンチャカチャーン。皆様方のご機嫌は益々お麗しいようにお見受けしますが、ここらで、本日のソフトボール大会のMVPを発表致します。本日のMVP選手は、国語科の鳥羽省三選手。鳥羽選手には主催者を代表して、大会快調の私から素晴らしいフレゼントを差し上げます。それでは、鳥羽省三選手どうぞ」と叫んだので、私がにやにや笑いながら彼の前に進んだら、彼は私の胸に、月桂冠の一升瓶の王冠を貼り付けてくれた。
 その一件以来、私の彼贔屓はますます激しくなり、その頃、学年主任をしていた私の受け持ち学年の進学実績は開校以来最高であった。
     〔答〕 リールからカセットテープにCDと移りにけりな聴覚機材  鳥羽省三
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

ありがとうございました

憂太郎です。
鳥羽様からの絶大なるオマージュ(笑)拝読いたしました。
私の拙歌から、こんな素敵なエッセイが生まれたとは、私にとっても嬉しい限りです。
今はもう絶滅種であろう名物(変人)教師の往年の生態は、同業者ならずとも憂愁をかきたてるものでありますね。
ありがとうございました。

こんばんは

再度取り上げてくださってありがとうございます。
はい。。たしかに穏やかすぎるプロテストですね~。
ワイシャツは、やはりホワイトシャツの白のイメージです。
緑のインクで新緑を刷る爽やか系のプロテストもなかなか良いですね。
それでは寒さ厳しき折、御身体に気をつけてお過ごしください。

ありがとうございました

私と同じように今でもテストの夢を見る方がいると知って、うれしかったです。
テストを「する」側も大変なこと、鳥羽様の“絶大なるオマージュ”で初めて知りました(笑)。
お互い、もっと良い夢を見たいものですね。

ありがとうございます

こんにちは、〈おっ〉です。
オマージュと感想を読ませていただきました。
まったく持ってその通りで、僕は幼少期サシスセソが上手く言えなくて、風呂場でお父さんにテストをされていました。
コロッケのくだりがあったかどうかは覚えていませんが、似たようなことがあったのかもしれません。
その後サシスセソは言えるようになりましたが、サシが苦手なところはオマージュにある通りです。笑
ありがとうございました。
プロフィール

鳥羽省三

Author:鳥羽省三
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。