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一首を切り裂く(079:恥)

 あけましておめでとうございます。
 旧年中は、皆様には一方ならぬお世話になりましたが、本年も宜しくお願い申し上げます。
 さて、年が改まっても相変わらずの「一首を切り裂く」ですが、残す所わずか二十題ですので、元旦早々、始めさせていただきたいと存じます。
     〔答〕 あらたまの年の初めに切り裂けば己が心も破れむとする  鳥羽省三
 

(髭彦)
    なに恥じてなに誇るかを品性の目安となして人世渡りぬ

 昨年末に、二日連続で我が連れ合いが熱視していたテレビ番組は、帰国した中国残留孤児の次女に当たる方の原作になる、日中二ヶ国に亘る親子関係の愛憎を主題にしたセミドキュメンタリードラマであった。
 そのドラマの中に、突然のソ連軍参戦に追われて引き上げて来る途中、牡丹江で家族から逸れた少年が、子供を持たない貧しい中国人夫婦に拾われて小学校に入るのだが、中国語を話せないために学業成績が振るわず、中国人の養父から責められる場面があった。
 その養父は、自分の成績の悪さを恥じ入っている少年を鬼のような形相をして責め立てる。
 「恥かしくはないか。恥かしいと思え。お前は赤椅子をもらったんだぞ。赤椅子をもらったお前は俺の子じゃない。家から出て行け」と叫んで。
 終戦後間も無く小学校に入った私のような者にとって、「恥かしさ」とは、貧困と貧相と腕力や学力の無さであった。
 昨今の少年や少女にとっての「恥かしさ」とは何だろうか?
 ケイタイが旧型だから恥かしい。
 カレがいないから恥かしい。
 カノジョがいないから恥かしい。
 自家用車が国産だから恥かしい。
 自分の入った高校が底辺校で、おまけに制服を着用しなければならないから恥かしい。
 
 私たち旧世代の者と彼ら新世代の者とには、「恥かしさ」を巡って、どんな考え方の違いがあるのだろうか。
 貧困がケイタイに変わったり、貧相がカレ・カノジョの欠如に変わったりしてはしているが、私たち旧世代の者の感じる恥かしさと、彼ら新世代の者の感じるそれとは、本質的には何ら相違ないと思われる。
 考えてみると、第二次世界大戦後六十年余りになるが、人間と言うか私と言うかは判らないが、私たち日本人の「恥」感覚は、ほとんど変化してはいないと言うことに気付く。
 本作の作者・髭彦氏は、「なに恥じてなに誇るかを品性の目安となして人世渡りぬ 」と仰る。
 これは、相当の覚悟と自信とを持って「人世」を渡って来られた方の仰る言葉である。
 ところで、他人のことはさて置いて、この鳥羽省三自身は、昨年、何を誇りとし、何を恥として「人世」を渡って来たのであろうか。
 誇りとするものは何一つ無いが、強いて申せと言われて挙げるならば、「題詠2009」に投稿された皆さんの作品を、人並み以上の情熱を持って読んで来たことである。
 恥とするものは幾らでもあるが、敢えてその中の一つを挙げるならば、「題詠2009」に投稿された皆さんの作品の中で、私が読み落としてしまった傑作が、一首や二首では無かったであろう、ということである。
 今日から新年である。
 不肖、私も亦、本作の作者・髭彦氏の半分ぐらいの品性を持って生きて行きたい願うものである。
     〔答〕 何を食べ何を食べねば体重を六十㎏以下に保てるだろうか  鳥羽省三

 
(梅田啓子)
    恥骨とふやさしき骨をもつ少女 立ち漕ぎをして坂道をゆく

 「恥骨とふやさしき骨をもつ少女」という表現は、私如き老齢の男性には到底理解し得ないような、格別に感性に優れた女性だけが感得し得る感覚なのであろうか?
 私の連れ合いは、還暦を二つ三つ過ぎてはいるが、それでも一応は女性なので、私が本作を示して、その上の句についての感想を聞き出そうとしたら、「この馬鹿者。今日は正月で、もう直ぐ可愛い孫娘たちが遊びに来るというのに、何を言い出すのだ。あんたは私に、可愛い孫娘たちの前で、正月早々それを言わせる気か」と言ってお尻を叩くのだ。
 博識で名を鳴らした、我が連れ合いでさえ口にすることを憚る、「恥骨」「とふやさしき骨をもつ少女」が、自転車の「立ち漕ぎをして坂道をゆく」風景。
 そうした風景は、本作の作者・梅田啓子さんの少女時代の風景とは一線を画した、開放的、健康的な風景ではあろうが、何故かエロティシズムの微風が漂っているような風景とも感じられる。
 このレベルの作品が、あともう十首も在ったならば、「題詠2009」は天下に誇れる歌会になるのだが。
     〔答〕 冷や水の立ち漕ぎをしてかっ転び週に三日のリハビリ通い  鳥羽省三


(理阿弥)
    常連と認められたが恥ずかしく食前サラダの胡瓜抜かれて

 これはどうやら、高級レストランでの出来事ではなくて、ファミレスでのことだな。
 瓢亭だろうが藍屋だろうが、「常連」ともなれば、だまって座ればいつものメニューが出て来る。
 本作の作者・理阿弥氏は、ごく最近になって、藍屋クラスのファミレスの「常連」として「認められた」のだが、「常連」に昇格する前の理阿弥氏が、「食前サラダ」の「胡瓜」だけを食べなかったことを知ってる店員が、常連然として理阿弥氏がその店を訪れると、何も言わないのに、「胡瓜」抜きの「食前サラダ」を出すので、それが恥かしい、と言うのだ。
 それこそ、自業自得と言うべきであろうが、理阿弥氏は、どういう理由で、何方に対して、恥かしいと言うのだろうか?
     〔答〕 本当は胡瓜の類が好きなのに贅沢めかして食べなかったの  鳥羽省三 


(羽うさぎ)
    恥ずかしいと言いつつパフェを食べるきみ言い訳してもイチゴは赤い

 <羽うさぎ>さんも大の恥ずかしがり屋さん。
 「イチゴパフェ」は必ずしも子供だけの食べ物とは決まっていないし、誰が何を食べようが、鳥羽省三がフランスのミニ国旗を立てたお子様ランチを食べようが、ちゃんとお金を払って食べる限りに於いては、何ら恥じるべき理由は無いはずではあるが、「子供みたいでしょう、わたし。でも、これ安いから食べるんですよ。特別なイチゴパフェ党、というわけでもないんですけど」などと、懸命に「言い訳」し、顔を赤らめながら、二人前も食べてしまう。
 それを見て、「どんな言い訳しようとも、君の顔は赤いし、君の可愛いお口に入ったイチゴも赤いよ」などと言ってからかったのは、元カレの<禿げうさぎ>なのである。
 そんな悪質な悪戯をしたのが原因で、<禿げうさぎ>は「羽うさぎ」さんの元カレになってしまったのである。  
     〔答〕 恥ずかしも言わずブタ饅十個喰う<禿げうさぎ>めは百貫デブだ  鳥羽省三


(ひいらぎ)
    恥じらった分だけ氷は溶けだして好きと言えずにアイスコーヒー

 「恥らった」時間が格別に長かったのか、それとも、恥らう時には格別な情念が発散されるからなのか、その理由は判然としないが、「恥じらった分だけ」アイスコーヒーの「氷は溶けだして」しまった。
 そこで、可哀そうにも彼は、その水入りの「アイスコーヒー」を「ひいらぎさん、私はあなたが好き」とも言えないまま、黙って飲んでいた。
 「好きと言えず」に<愛す>コーヒーを、ただ黙って飲んでいるだけ。
 ひいらぎさん、男って、大概そんなものですよ。
 ご主人だって、そうだったでしょう。
     〔答〕 愛すとも言えずにアイス亭主飲む直ぐに飲むからアイスは溶けず  鳥羽省三


(佐藤羽美)
    その時の気恥ずかしさの手触りを確かめながら無花果を食む

 本作の作者・佐藤羽美さんは確か女性だったはず。
 その女性が、「その時の気恥ずかしさの手触りを確かめながら」とは、なんだか雰囲気が怪しくなって来た。
 手で触られるのは当然女性であろうが、この作品の表現からすると、手で触るのも、女性の佐藤羽美さんということになる。
 旧約聖書から取材しているとは言え、この一首の人間関係はかなり怪しい。
     〔答〕 感情を触感に換え歌を詠む佐藤羽美はやはり技巧派  鳥羽省三 


(花夢)
    破廉恥という語のリズムでステップを踏んで男と女が踊る

 本作の大筋が客観写生から成立しているのであるならば、作者の花夢さんは、「ステップを踏んで踊る男と女」の観察者に過ぎない。
 「リズム」の形容語句として歌い出し部分に置かれている「破廉恥という語の」は、激しい嫉妬心から発したものに違いない。
     〔答〕 嫉妬とふ心のままにステップを見つめる者のまなこギラギラ  鳥羽省三
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No title

あけましておめでとうございます。
今年も拙作をひろってくださり、ありがとうございます。
鳥羽さんの情熱、ありがたくいただきました。
うれしい1年のはじまりとなりました。

あけましておめでとうございます

ファミレスなんて、お仕着せの決まりきったサービスしかしないところ。
そう油断してると常連扱いされて、かえって決まり悪くなりますね。
そんなに俺はこの店に通ってるのか、という恥ずかしさ。
「またあいつが来たよ。あの胡瓜も食えないやつ」と思われてるのかと・・・

 気兼ねなく胡瓜を残す新店舗ウェイトレスに知る者はない

今年もよろしくお願いします。

あけましておめでとうございます

鳥羽さま、はじめまして。
拙歌をとりあげてくださってありがとうございます。
短歌を始めて2ヶ月目で詠んだ歌で、今見ると、お題同様に恥ずかしさをも感じます。
パフェを食べる男性の気恥ずかしさを詠んだつもりでしたが、鳥羽さんの大胆な解釈とても楽しかったです。
これからもどうぞよろしくお願いします。

迎春

鳥羽様
 
 ご健康とご多幸をお祈りしています。
 今年もどうぞよろしくお願いいたします。
 
鳥羽様の短歌とその作者への愛情、この催しを盛り上げようと見守る姿勢には心から敬服しております。
どうぞお身体にあまりご無理のないようになさって下さいね。

私は色々と恥に思うことばかりですが・・
ただ、短歌投稿の前には同じ表現がないかをチェックし気をつけてはいます。それだけかな・・。





  

 

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