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一首を切り裂く(076:住)

(理阿弥)
    駅舎への近道みつけ驚けり住み慣れたこの街去る朝に

 たとえ「この街去る朝」であったとしても、駅舎への近道」を見つけたのは、非常に幸運なことです。
 私などは、「この街去る朝」どころか、人生の去り際になっても、どの道も見つけられないで居ますから。
     〔答〕 日が暮れて道まだ遠し駅舎から最終電車が今発車した  鳥羽省三 


(わだたかし)
    住んでいる街を聞ければ親密になれた気がする研修旅行

 言っていることは他愛無いことですが、その気持ちはよく解ります。
 「住んでいる街を聞ければ親密になれた気がする」のですから、お名前の一字が共通してでもいると、親戚になれたような気がするものですよ。
     〔答〕 穿いているパンツの柄が似てたから風呂屋を出てから一緒に飲んだ  鳥羽省三


(蓮野 唯)
    居候言い方変えておまけさん住んでいるのは玄関の脇

 「おまけさん」が傑作。
 尻取り短歌も、ここまでこじ付けられれば表彰ものです。
     〔答〕 居候どうもがいても居候玄関脇の部屋で泣いてる  鳥羽省三 


(原田 町)
    三十年住みて余所ものこの在の祭囃子が風に聴こゆる

 祭囃子の太鼓の音は、「テンツク、テンツク、よそ者出て行け、よそ者去れ去れ」と鳴っているのである。
 わずか三十年しか住んでいないのに、村落社会に根を下ろせると思うのは大間違いである。
     〔答〕 三十年住んで故郷の江戸捨てた平手の造酒は酒に溺れて  鳥羽省三 


(石畑由紀子)
    君の住む街の天気を先にみる癖がつきました お元気ですか

 我が連れ合いの見る天気予報は、首都圏のと、北東北のと、大阪のと、北海道のと。
 首都圏は私たち二人と次男の現住地。
 北東北は連れ合いの母親の居住地。
 大阪は単身赴任中の長男の居住地。
 北海道は長男のパートナーのご両親の居住地である。
 五句目の「お元気ですか」は、単なる付け足しではない。
     〔答〕 大阪は明日も雨天だ長(おさ)の子よこうもり傘の用意忘るな 


(だや)
    図書館の住人に教室で会う 君と眼鏡を交換したい

 <だや>という恍けたハンドルネームに相応しく、恍けた味の短歌である。
 そう、そう、近頃はたくさん居ますからね、「図書館の住人」が。
 部活に熱中するでもない、クラスメイトと馴染むでもない。
 思えば、不思議な彼らですが、あれで仲間同士はなかなか団結力が堅く、「君はいいメガネを掛けてるね。こんなにハイカラなメガネは、本の虫の君には勿体無いから、僕のと交換しよう」などと話しかけでもしたら、たちまち仲間が集まって来て、痛い目に遇うこと必至。
 近頃の図書館住人の中には、元空手部なんてヤツも居ますからね。
     〔答〕 教師にも職員室に寄り付かぬ図書館族居て彼らの仲間  鳥羽省三


(今泉洋子)
    うちひさす都へと子は移り住み葉桜春の余白うめゆく

 「うちひさす都の夜にともる灯のあかきを見つつこころ落ちゐず」。
 今さら申し上げるまでも無く、齋藤茂吉作・『死にたまふ母(改選版)』<其の一>の四首目の歌である。
 「うちひさす」という言葉が、「都」などに掛る枕詞であることを知ったのは、この短歌に接した時であった。
 近代短歌通と見受けられる今泉さんのことであるから、上掲の作品を創るに際しては、必ず、斉藤茂吉作のこの短歌を頭に置いたことであろう。
 茂吉作が創られたのは1913年であるから、それから百年近くも経った今年、本作の作者の今泉さんは、母の臨終を看取るために茂吉が捨てた東京に、ご愛息を送り出したわけだ。
 「うちひさす都へと子は移り住み」、ここに母としての今泉洋子さんの心に「余白」が生じた。 
 その心の「余白」を「うめゆく」のは、花の散った後の「葉桜」なのだ。
 「葉桜」は花ならざるが故に、幽かな翳をその身に湛えている。
 葉桜が心の余白を埋め行こうとも、母親・今泉洋子さんの心の中には幽かな翳が射していることであろう。
     〔答〕 うちひさす都に往にし子の母よ佳き新年をお迎へ給へ  鳥羽省三


(ほたる)
    絵に描いた未来予想図塗りこめる住宅展示場に降る雨

 この超不況下に生きる庶民の夢を具現しているのが「住宅展示場」である。
 その「住宅展示場に」「降る雨 」は、脆くも<ほたるさん>の夢を打ち砕くのである。
 でも、夢を見るのは青春(?)の特権だから、いついつまでも夢見ることを忘れないで。
     〔答〕 絵に描いた餅でも食べてほたるさん素晴らしい年お迎え下さい  鳥羽省三
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感謝申し上げます

  鳥羽省三さま
 身にあまるオマージュ感謝感激いたしました。
「うちひさす」を使いたかったので使ってみました。
下の句は、葉桜の「は」春の「は」余白の「は」のは行で、母が子供
が旅立って「ははは」と笑っているところでしょうか。
丁寧な評をいただきありがとうございました。今年は鳥羽様に何首もとりあげていただき、作者冥利につきる評やアドバイスをいただいたりして大変嬉しく感じました。またいろいろとお教えいただき歌会に参加する以上の勉強をさせていただきました。心から感謝申しあげます。鳥羽さま佳いお年をお迎えくださいませ。

☆重ねたる馬齢を悔ゆる年の瀬に君のオマージュは言葉の花束
 

ありがとうございます

鳥羽省三様
「一首を切り裂く」を楽しく読ませていただきました。また私の拙い歌にご感想、時には毒舌?をいただき感謝しております。途中のお休みにはどうなさったかと案じておりましたが、益々のご健筆に感服しております。来年も筆鋒するどきを期待しつつ、お礼の言葉とさせていただきます。

よいお年を

 表彰された蓮野参上w

 今年はありがとうございました。
 こちらのブログが短歌を詠む上での一つの動機になっていた事実をこっそり白状するものでありますw

 来年もお互いに頑張りましょうねぇ☆

 よいお年を。

再返歌

ホームにて飾り荷物を振り捨てるいつも心に中島みゆき

 よいお年を!
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鳥羽省三

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