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一首を切り裂く(061:ピンク)

(井手蜂子)
    てづくりのピンクッションに残された針を数える躾は抜けず

 「ピンクッション」とは、私の連れ合いが<針山>と呼んでいる、あの縫い針や待ち針たちの風待ち港のような役割りを果たしている品物のことでありましょうか。
 もしそうならば、私や私の連れ合いは、ここでも亦、自分たちの老いをまざまざと確認させられたことになりましょう。
 世代変われば呼び名も変る。
 ところで、本作の作者の井出蜂子さんは、私や私の愛妻にとっては<針山>以外の何物でもないあの代物を、「ピンクッション」などというハイカラな呼び名でお呼びになって居られるにも関わらず、そのピンクッションに刺している「針の数を数える」という、奥ゆかしい「躾」からいつまでも抜け切れないで居られる方なんですね。
 この作品に接して私は、「日本の若者たちもまんざら捨てたもんでもないわい」と、今さらながらに、本作の作者世代の人たちのことを見直し、自分たちの前途にもかすかな光明を見出せたような気になりました。
 とは書いてはみたものの、私の前にましますのは本作の作者・井出蜂子さんの御麗姿では無く、あくまでもよぼよほのノートバソコンに過ぎません。
 故に事の実情は杳として知れません。
 場合によったら、「はい、私が本作の作者の井出蜂子ですよ。針山をピンクッションと呼んでいる割にはあまりにも年嵩なので、鳥羽さんも吃驚なさったでしょう。でも、いくら後期高齢者だからと言って馬鹿にしないで。私のことを馬鹿にしたら、こうするわよ。」などと仰り、ピンクッションから縫い針ならぬ蜂の毒針を抜き出して来て、ひと刺し刺されたらお終いだから、これ以上は書かないことにする。
     〔答〕 針山も世代変わればピンクッション ピンクッション地獄で跳ねて遊ぼう  鳥羽省三


(かりやす)
    草食の忌まはしきかな手も触れずピンクレディーを飲むをとこのこ

 「手も触れずピンクレディーを飲む」が判らなかった。
 針山世代の私からすれば「ピンクレディー」と言ったらあの<ピンク・レディー>、即ち<ミーちゃん・ケイちゃん>の<ピンク・レディー>を指すものと思ったからなのです。
 それにしても、あの<ピンク・レディー>を「手も触れず」「飲む」とはどうしたものでしょうか。
 「手も触れず」とは惜しさも惜しいし、その上、この草食系男子が、あの<ピンク・レディー>「飲む」ことが出来るとは、到底思われません。
 小柄で細身のケイちゃんならともかく、大柄でブーツからはみ出すほどの太足をしていたミーちゃんは、とても飲めるもんではありませんから。
 と、ここまで書いて来て、私はハタと気が付いた。
 本作の作者の言う「ピンクレディー」と私の言う<ピンク・レディー>とは確かに違う。
 わ<かりやす>か、「・」の有り無しが。
 <かりやす>をハンドルネームとされる本作の作者は、あのカクテルの「ピンクレディー」を「手も触れず」に「飲むをとこのこ」を忌々しいと思うほどに嫌悪して居られるのでありましょう。
 <かりやす>というひらがな書きのハンドルネームは、いかにも草食系めいているから、もしかしたら、本作の作者は、激しい自己嫌悪の情をこの作品に託したのかも知れません。
     〔答〕 デュエットのピンク・レディーはカクテルのそれに由来す酔いそなカクテル  鳥羽省三 


(磯野カヅオ)
    目に映る遠景染むるピンク率高き渋谷に蝉囂し

 読者の中に「囂し」を「かまびすし」と読める者がいるかどうかを試すために、磯野カヅオ氏はかくもくだらない作品を投稿された。
 磯野カヅオ氏の衒学趣味、ここに極まれり。
 インドで暑気あたりして、色ボケしてしまったのかな?
     〔答〕 目を癒やす遠近(おちこち)の景 渋谷には緑化地帯が案外多い  鳥羽省三


(今泉洋子)
    あるがまま生きてもみたしもぢずりの螺旋をのぼる可憐なピンク

 なまじっか古典文学を聞き齧ったものですから、「もぢずりの螺旋」に眩惑されました。
 これは、曼荼羅模様にペンキを塗った螺旋階段なのですね。
 パチンコ屋かキャバレーの従業員出入り口になっている。
 それはそれとして、「可憐なピンク」に装った彼女たちは、必ずしも「あるがままに生きて」いるわけでは無いと思われます。
 「女が階段のぼる時」、彼女等は彼女等なりの上昇志向や苦悩などを抱えながら昇るのだと、私は思います。
     〔答〕 足取りも軽く階段昇りつつお腹の始末を考えていた  鳥羽省三
         還暦を過ぎれば後はあるがまま生きて行く他ないじゃないかな  々
 ものは序でともう一首。
         古希直ぐのやつがれなればそのまんま西へ行くしかないではないか  鳥羽省三

 
(月下燕)
    地図上の通勤経路を塗りつぶすピンクの蛍光ペンがかすれる

 ピンクの蛍光ペンは、その綺麗さと可愛らしさに惹かれてつい買ってしまいがちであるが、使い道は殆んど無い。
 そこで、さんざん机上のペン皿に晒した挙句、「地図上の通勤経路を塗りつぶす」時に使ったりするが、その頃には揮発成分のほとんどか失われてしまっているから「かすれ」てしまうのである。
     〔答〕 地図に無いカフカの城を辿るとき蛍光ペンは役に立たない  鳥羽省三


(花夢)
    遺された買い物メモをピンク色の蛍光ペンでゆっくりなぞる

 「ピンク色の蛍光ペン」を買ってしまう動機と、その使い道の無さについては上記と同じ。
 花夢さんは、その使い道の無いビンク色の蛍光ペンを、遣い残しの買い物メモの塗り潰しに使っていらっしゃる。
 暇潰しに塗り潰しをしていらっしゃるところはいかにも花夢さんらしいが、そうした行為は尊い青春の空しい使い潰しでしかない。
     〔答〕 遺された買い物メモはどなたかの伝言じゃなく使い残りだ  鳥羽省三


(一夜)
    夕闇が広がってゆくその前に ゴールドピンク黄昏の海

 黄昏刻の水平線の光景。
 今し、水平線上の空には夕闇が広がり、その手前の海はゴールドピンクの夕映えに染まる。

 「秋冬風全く凪ぎ、天に一片の雲無き夕、立つて伊豆の山に落つる日を望むに、世に斯る平和のまた多かる可きとも思はれず。日の山に落ちかゝりてより、其全く沈み終るまで三分時を要す。初め日の西に傾くや、富士を初め相豆の連山次第に紫になるなり。日更に傾くや、富士を初め相豆の連山紫の肌に金煙を帯ぶ。此時濱に立つて望めば、落日海に流れて、吾足下に到り、海上の舟は皆金光を放ち、逗子の濱一帯、山と云はず、砂と云はず、家と云はず、松と云はず、人と云はず、轉がりたる生簀の籠も、落ち散りたる藁屑も、赫焉として燃へざるはなし。斯る凪の夕に、落日を見るの身は、恰も大聖の臨終に侍するの感あり。莊嚴の極、平和の至、凡夫も靈光に包まれて、肉融け、靈獨り端然として永遠(イタルニテー)の濱の彳むを覺ふ。物あり。融然として心に浸む。喜と云はむは過ぎ、哀と云はむは未だ及ばず。已にして日愈〃落ちて伊豆の山々にかゝるや、相豆の山忽ちにして印度藍色(インジゴー)に變ず。唯富士の嶺、舊に仍て紫上更に金光を帯ぶるのみ。伊豆の山已に落日を衒み初めぬ。日一分を落つれば、海に浮べる落日の影一里を退く。日は迫らず、寸又寸、分又分、別れ行く世をば顧み勝に悠々として落ち行く。已にして殘一分となるや、急に落ちて眉となり、眉切れて線となり、線瘠せて點となり、忽ちにして無矣。眼を上ぐれば、世界に日なし。光消へて、海も山も蒼然として憂ふ。日は入りぬ。然も餘光の忽ち箭の如く上射し、西空金よりも黄なるを見ずや。偉人の沒後實に斯くの如し。日の落ちたる後は、富士も程なく蒼ざめ、やがて西空の金は朱となり、燻りたる樺となり、上りては濃き孛藍色となり、日の遺孳とも思ふ明星の次第に暮れ行く相模灘の上に目を開きて、明日の出日を約するが如きを見るなり。」
(徳冨蘆花著『自然と人生』「相模灘の落日~自然に對する五分時~」より)
     〔答〕 なにごとを言うも無駄なり今はただ徳富蘆花を熟読されよ  鳥羽省三 

     
(蓮野 唯)
    引退の記念にもらった花束のピンクもやがてセピアの思い出

 蓮野唯さんは、何の世界から、何の座から引退されたのでありましょうか?
 相撲界から? フイギュアースケート界から? 女子プロレス界から? グラヴィアクインの座から? 粉ワサビ捏ね係主任の座から?
 それらのいずれの座からの「引退」であろうとも、その折に頂戴したピンクの花束がセピア色に変わったとしたならば、次に占める座は極楽の蓮の座しかありません。
 唯々(ただただ)お覚悟召されよ。
     〔答〕 せりなずなごぎょうはこべら極楽の佛の座こそ揺ぎ無き座よ  鳥羽省三
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実は文芸部w

 こんにちは。

 今回の歌は全くのフィクションで御座いますw すいませーーん☆
 でもまあ、ホラ、なんか、キレイでいい感じでしょ?

 つーか、相撲界てなんですのんっwww ムリですやんw

 ご返歌ありがとうございます。面白すぎます☆ 今一番のお気に入りになりましたw

ありがとうございます

 鳥羽省三様

 いつも、採りあげて頂きありがとうございます。
私はピンクが大好きで上から下までピンクです。
だからかえって「ピンク」のお題は苦手に感じました。
もぢずりよりもねじ花が私の性格にぴったりかもわかりませんね。
曼荼羅模様にペンキを塗った螺旋階段とは面白いですね。

☆華甲とは華(はな)の甲(はじめ)なり古稀喜寿傘寿が三途(さんづ)にきこゆ地獄耳

あと39のお題ですね。がんばってください。
今日はこちらでも初雪が降りました。くれぐれもご自愛くださいませ。
☆寒林檎食めばさくさく白秋の愛したひとに降る朝の雪


文法のまちがいいで訂正

  鳥羽省三さま

 ↑の歌の結句は「きこゆ」ではなく連体形の「きこゆる」にしないと
いけませんね。危うく先生におしかりをうけるところでした。

☆華甲より古稀喜寿をすぎ傘寿が三途ときこゆるわが地獄耳

に訂正いたします。

おはようございます。

磯野カヅオです。コメントありがとうございます。

ご指摘の点、最初は素直に"蝉のやかまし"or"蝉の喧し"にしようと思っておりました。ピンクを"ピンク率"と用いて渋谷を詠むのも悪い発想ではないと。
しかし、この歌のすぐ次のお題「坂」で"喧騒"という言葉を使うことになってしまったのです。「ピンク」と「坂」は同じタイミングでトラックバックしたかったので(←今回はあるルールで区切って数首ずつトラックバックしています)、重複を避けるために"囂し"としました。

やはり、自解と言い訳って紙一重かもしれないですね。

それでは、失礼いたします。
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