一首を切り裂く(060:引退)
(西野明日香)
「もうわしは引退やあ」と近頃は言わなくなった父が居眠る
「引退」を口にするのも元気なうち。
作中の「父」は、今さら自分が口に出して言わなくても、周囲の誰もが認めてくれるだろうと思っているのだろう。
その父が居眠りしてる。
その様を目にするにつけても、娘<明日香>は、未だ一人身の我が不孝を省みるのであった。
〔答〕 嫁ぐ日は今日か明日かと思ひしにいよよ褪せ行く我が香なりけり 鳥羽省三
(原田 町)
引退と胸張るほどの実績もなくてずるずる廃業となる
そう、実績を残してこその引退。
周囲の期待も空しく、さしたる実績も残せないまま宰相の座から退いた誰彼などは、引退などという晴れがましいことでは無く、さっさと廃業して、故郷の山口や群馬や福岡に帰り、田圃のあぜ道の草取りでもするべきだ。
〔答〕 引退と胸張ることも無かりしが一首切り裂きご隠居仕事 鳥羽省三
(tafots)
「いい加減この子引退させようか」茶碗のひびをなぞれり母は
昨今の女性は、本来は、人間の幼い者を指して言うべき語である「子」という語を、動植物や無機物を指して使うことが多い。
曰く、「この子、動物病院に行って、去勢しちゃおうか。」
曰く、「この子よりあの子の方がいいから、明日ユニクロに持って行って交換しちゃおーっと。」などなど。
こんな、言葉の乱れの現行犯のような場面に出くわすにつけ、私は、こうした言葉遣いは若者の専売特許だとばかり思っていた。
だが、そうした私の認識は浅かった。
私は、現代の若者を必要以上に見くびっていたのだ。
本作を見るに、昨今はいい年をした女まで、「茶碗のひび」をなぞって「いい加減この子引退させようか」などと言うのだ。
いや、いい年をした女どころか、本作の場合はいい以上の年をした「母」なのだ。
ひび割れた茶碗を捕まえて「いい加減この子引退させようか」と言ったのは。
これには、さすがの私もすっかりお手上げだ。
〔答〕 ひび割れて股割り出来ず引退だ千代大海は来場所限り 鳥羽省三
(bubbles-goto)
探偵に引退決意させたのはアポロ月面着陸の記事
探偵の引退決意とアポロの月面着陸の記事とは、必然的な関係は何ら無いようにも思えるが、あの聡明な<bubbles-goto>さんから、そう言われてみれば、そのように思えないこともない。
<短歌の力>とは、このような事を指して言うのだ。
これこそ、短歌の<リアリティ>と言うものだ。
〔答〕 探偵に引退撤回させたのはアポロ計画疑惑の記事だ 鳥羽省三
(みぎわ)
引退の後は図太く生きませう村山富市の伸びゆく眉毛
彼は確かに図太い。
彼は引退後ばかりではなく引退前も図太かったのだ。
〔答〕 今頃は鼻毛も伸ばしているだろう村山富市おとこを下げた 鳥羽省三
「もうわしは引退やあ」と近頃は言わなくなった父が居眠る
「引退」を口にするのも元気なうち。
作中の「父」は、今さら自分が口に出して言わなくても、周囲の誰もが認めてくれるだろうと思っているのだろう。
その父が居眠りしてる。
その様を目にするにつけても、娘<明日香>は、未だ一人身の我が不孝を省みるのであった。
〔答〕 嫁ぐ日は今日か明日かと思ひしにいよよ褪せ行く我が香なりけり 鳥羽省三
(原田 町)
引退と胸張るほどの実績もなくてずるずる廃業となる
そう、実績を残してこその引退。
周囲の期待も空しく、さしたる実績も残せないまま宰相の座から退いた誰彼などは、引退などという晴れがましいことでは無く、さっさと廃業して、故郷の山口や群馬や福岡に帰り、田圃のあぜ道の草取りでもするべきだ。
〔答〕 引退と胸張ることも無かりしが一首切り裂きご隠居仕事 鳥羽省三
(tafots)
「いい加減この子引退させようか」茶碗のひびをなぞれり母は
昨今の女性は、本来は、人間の幼い者を指して言うべき語である「子」という語を、動植物や無機物を指して使うことが多い。
曰く、「この子、動物病院に行って、去勢しちゃおうか。」
曰く、「この子よりあの子の方がいいから、明日ユニクロに持って行って交換しちゃおーっと。」などなど。
こんな、言葉の乱れの現行犯のような場面に出くわすにつけ、私は、こうした言葉遣いは若者の専売特許だとばかり思っていた。
だが、そうした私の認識は浅かった。
私は、現代の若者を必要以上に見くびっていたのだ。
本作を見るに、昨今はいい年をした女まで、「茶碗のひび」をなぞって「いい加減この子引退させようか」などと言うのだ。
いや、いい年をした女どころか、本作の場合はいい以上の年をした「母」なのだ。
ひび割れた茶碗を捕まえて「いい加減この子引退させようか」と言ったのは。
これには、さすがの私もすっかりお手上げだ。
〔答〕 ひび割れて股割り出来ず引退だ千代大海は来場所限り 鳥羽省三
(bubbles-goto)
探偵に引退決意させたのはアポロ月面着陸の記事
探偵の引退決意とアポロの月面着陸の記事とは、必然的な関係は何ら無いようにも思えるが、あの聡明な<bubbles-goto>さんから、そう言われてみれば、そのように思えないこともない。
<短歌の力>とは、このような事を指して言うのだ。
これこそ、短歌の<リアリティ>と言うものだ。
〔答〕 探偵に引退撤回させたのはアポロ計画疑惑の記事だ 鳥羽省三
(みぎわ)
引退の後は図太く生きませう村山富市の伸びゆく眉毛
彼は確かに図太い。
彼は引退後ばかりではなく引退前も図太かったのだ。
〔答〕 今頃は鼻毛も伸ばしているだろう村山富市おとこを下げた 鳥羽省三
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