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一首を切り裂く(059:済)

(松木秀)
    人気ある土地分譲の広告があっという間に「済」で埋まりき

 北海道の土地が別荘地として脚光を浴びていた当時のことを回想しているのである。
 登別などの温泉つきの別荘地の広告が全国紙に掲載される。
 ところが、翌週になると、そのあらかたに「マル済」のマークが付けられて、それより更に条件の悪い土地の広告が載り、バブル景気の泡に塗れた俄か成金たちの購買意欲をそそり立てる。
 あの頃は、毎朝配達される新聞は土地分譲の広告で埋め立てられ、一介のサラリーマンに過ぎなかった私でさえ、時代に乗り遅れまいとして焦ったものであった。
 それが今になってみるとどうだ。
 北海道経済振興のエンジンのような役割りを果たしていた北海道拓殖銀行が潰れ、かつての別荘地も北キツネの棲家に帰してしまった。
     〔答〕 そのかみの温泉つきの分譲地 狐狸の棲家となりにけるかも  鳥羽省三


(ウクレレ)
    もう済んだことだと空に言い放つヒコーキ雲よ消えてなくなれ

 一首の意味はどうであれ、「もう済んだことだと空に言い放つ」、「空に言い放つヒコーキ」、「ヒコーキ雲よ消えてなくなれ」という、この言葉の運びに魅力があります。
 「もう済んだことだと空に言い放つ」という上の句と「ヒコーキ雲よ消えてなくなれ」という下の句との響き合いにもそれなりの必然性が感じられ、青春の空しさと憧れとをよく詠み得ている。
     〔答〕 大空に紙ヒコーキよ舞い上がれ我が憂鬱を吹き飛ばし行け  鳥羽省三


(理阿弥)
    使用済ゴムを持ち帰らせる癖シベリアに似た名をした女の

 「使用済ゴムを持ち帰らせる癖」という唐突な歌い出しには驚くも、それに続く「シベリアに似た名をした女の」にはがっかり。
 その様は、アプローチを気合いよく滑り出し、踏み切りも十分であったが、その勢いを空中で持ち堪えられなくなり、シャンツェの真ん中辺りにへたり込んでしまった失敗ジャンプを思わせる。
 老獪な作者はその失敗を糊塗すべく、「シベリヤに似た名をした女の」などと言う思わせぶりな語句を持ち出して、愚かな鑑賞者に、シベリア抑留者の性処理問題でも連想させようとしたのであろうが、その努力も所詮無駄。
 下手なジャンプは飛ばぬに似たり。
 話は変わるが、私の学生時代の友人にM君という法政大学の学生が居た。
 そのM君が未だ一年生で、神田川沿いの三畳一間のアパート暮らしをしていた頃、その隣室に、年の頃三十五、六歳の少し見られる女性が住んでいた。
 ある時、その少しは見られる女性がM君に向かって、「ねえ、あんた、Mさんと言ったかしら。あんた毎晩遅くまで勉強してるわね。でも、たまには気晴らしに私の部屋に来て、お茶でも飲まない。私も退屈してるから」と言ったそうだ。
 軟派学生のカタログから飛び出して来たような風体の私からすれば、硬い一方のM君ではあるが、そこは若者、詰襟の上着のフケを払って、早速その誘いに乗ったそうだ。
 ひと通りの挨拶の後、当たり前田のクラッカーなどを食べながら、人肌よりはかなり熱つめの紅茶を飲んだ。
 そのかなり熱めの紅茶を飲みながら、部屋の外を見ようとして視線をガラス窓の方に移したら、ガラス窓の敷居の上に、何か懐かしいような恥かしいような小さな袋状のものが十数個並べられていた。
 よくよく見ると、その袋状の物はあのゴム製品であった。
 そうと判ったとたんに、目のやり場を失ってうろうろしているM君に向かって、その女性は、「あら、悪いものを見られちゃったわね。でも、まあいいか。誰でも使うものだから。これ高いから、一回こっきり使って捨ててしまったらもったいないでしょ。だから、内側に歯磨き粉つけて干してあるのよ。内側に歯磨き粉つけたら衛生的でいいでしょ。歯磨き粉は、ライオンよりサンスターがいいみたい。滑りがいいみたいよ。」と言ったのだそうだ。
 その後、その少しは見られる女性とM君とがどうなったかについては、私は知らない。
     〔答〕 使用済みゴム製品を持ち帰り赤児の哺乳瓶にする気か  鳥羽省三


(髭彦)
    済をチェと州はジュと読む隣国の離島にむごき歴史ありけり

 今度は硬い話だ。
 髭彦氏は私に、付け入る隙は少しも与えない。
 「済をチェと州はジュと読む」、これに「島」を付けると「済州島」。
 今は、韓国きっての避寒地として賑わい、韓国本土の人々からは「東洋のハワイ」とも呼ばれている。
 その「済州島」の「むごき歴史」とは、長期間に亙った本土王朝や日本への「朝貢」の歴史や「済州島四・三事件」などを指して言うのでしょうか。
     〔答〕 衣手の呉善花の祖(おや)の島 済州島にカジノの多き  鳥羽省三
 

(yunta)
    一生の決済の日に天秤で量られるのは何の重さか

 「一生の決済の日に天秤で量られる」ものが在るとは、寡聞にして初耳。
 もし、そんなものが在るとすれば、それは、その者の為した悪事の総量ないしは苦悩の総量。
 そのいずれにしても、
     〔答〕 省三くん、君の重さは百キロ超ボクサーならばヘビー級だよ  鳥羽省三


(久野はすみ)
    済し崩しそれもまたよし柊の古木のごとく棘失いて

 「柊」の「棘」は「古木」になるごとに、「済し崩し」に失われて行くのですか。
 そして<久野はすみ>さんの「棘」もまた。
 されど、「それもまたよし」と仰る。
     〔答〕 歳々に我が哀しみは深くしていよよ鋭くなりぬる棘よ  鳥羽省三
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No title

う~ん。
自分としてはいたって真面目に詠んだつもりなのですが・・・
むずかしいですねぇ。

 避妊具を忘れた末の自分だと出生語る隣のタカシ

ありがとうございます。

不思議ともう取り上げていただけないような気持ちになっていました。でも、取り上げてもらえました!ありがとうございました。
選歌していただいたのは「ピンク」のお題の作なのですが、都会の怪談めいた法政大学Mさんの逸話のあまりのインパクトに、こちらの記事へお礼のコメントを残すことにします。

ありがとうございます。

(訪問が大変遅くなり申し訳ありません。)
「一生の決済の日に天秤で量られる」ものがあると思えば、悪事を行ったとしても、苦悩の渦中であっても、まだできることが見えはしないかと。
どうもありがとうございました。
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