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一首を切り裂く(058:魔法)

(迦里迦)
    かぼちゃ馬車圧力鍋にその魔法煮崩れてシンデレラ帰れずじまひ

 シンデレラ姫の乗るかぼちゃの馬車というメルヘンの世界と、そのかぼちゃをあっと言う間に煮崩れさせてしまう圧力鍋という現実の世界とが、やや窮屈な歌い方ながら両立しています。
     〔答〕 煮崩れたかぼちゃの馬車に飛び乗りしシンデレラ姫あやうくセーフ  鳥羽省三


(ひいらぎ)
    たんぽぽが咲いただけでも嬉しくて魔法使いじゃなくて良かった

 「黄金の花よりたんぽぽの花」というところでしょうか。
 気の優しい少女の、現実に根を生やした生活から感じる喜びがよく表現されております。
 こんな作品を、世に「へたうま」と言うのでしょうか?
     〔答〕 たんぽぽの黄色い花が十万円金貨だったらもっと嬉しい  鳥羽省三


(野州)
    はつ夏の蝿の羽音の心地よさ悪魔法典読んでまどろむ

 読んでいるのが「悪魔法典」でなくても、初夏の午後の読書は、ついまどろみに誘われてしまうものです。
 そんな時に、生まれ出たばかりのハエの羽音が聞こえてきたら、もっともっと眠くなる。
     〔答〕 はつ夏の花壇の椅子のまどろみは蝿の羽音も子守唄のごと  鳥羽省三 
 

(理阿弥)
    外祖父は稀代のメモ魔法外な量の日記が土蔵に眠る

 「黄昏、玉の井辺りを散策。飾り窓の妓ら余が髭面を見て嘲笑すと雖も、余は恥づること無ければ一顧だにせず。両国橋を渡りて柳橋に至るに、河畔にて赤犬と黒犬の交接するを目にす。往来の学童ら目を皿の如くして見つめ、互ひに顔面を赤らめ居たり。」とかなんとか。
 理阿弥陀仏殿の御外祖父様の日記ともなれば、それは和本仕立ての美本にして、近代庶民生活の好個の資料たるべし。
 拠って珍重すべし。
     〔答〕 外祖母は稀代の借金魔にあれば行李の底から証文続々  鳥羽省三
  

(髭彦)
    湯を保つたかが壜にぞ魔法とて形容なせしこころを偲ぶ

 たかが熱湯の熱を保つための壜に過ぎないのに、それに魔法瓶と名付けた商策の巧みさに呆れているのだろうか?
 それとも、その素朴さに感動しているのだろうか?
 そのいずれにしても、言われてみれば「全くその通り」と、本作の作者の発見のすばらしさに感心すること頻りの評者ではある。
     〔答〕 水を保つただそれだけに数百億ダム濫造の悪政思ふ  鳥羽省三


(本田鈴雨)
    子供には触れさせざりし魔法瓶その湯で祖母は薬飲みゐき 

 されど魔法瓶。
 その魔法瓶を、「子供には触れさせ」ないで、魔法使いのお婆さんから賜わった宝物の如く珍重して、それに入れられた湯で薬を飲み、命を繋いでいた祖母もいた。
 これにもまた、感動すること頻りなり。
     〔答〕 触れさせぬ理由は強欲ならずして優しさなりき懐かしき祖母  鳥羽省三  


(西野明日香)
    魔法瓶の残り湯捨てて声にせぬ「おやすみ」シンクはボコンと応う

 問題作である。
 三句目の「声にせぬ」の「ぬ」は、接続から判断するに、完了の助動詞ではなく、打消しの助動詞であろう。
 ならば、「声にせぬ『おやすみ』」とは、「声としては出さない『おやすみ』の挨拶」ということになろう。
 すると、一首の意は、「作中の動作主は、そろそろベットに入ろうとして、魔法瓶の残り湯を台所のシンク(流し台)に捨てた。その時、声としては出さなかったが、動作主の気持ちの中には、誰に言うでもないが、『おやすみ』と挨拶の言葉を交わしたい気持ちが去来した。すると、動作主のそうした気持ちを察したかの如くに、ステンレススチール製のシンクが『ボコン』と音立てて挨拶を返した」ということになろう。
 独身女性の孤独な生活と哀切な気持ちとが反映された傑作である。
     〔答〕 玄関の鍵閉ざしつつ口にする「明日またね」と、返答は無し  鳥羽省三  


(原田 町)
    うつし世に魔法あらばと祈りつつ河野裕子の闘病歌よむ

 河野裕子氏の「闘病歌」。
 私もまた、何者かに祈念するが如き気持ちで熟読させていただきました。
     〔答〕 あの夏の逆立ちなどは見ぬもよしせめても一度怒れよ裕子  鳥羽省三


(流水)
    温もりがまだ残ってる魔法瓶寂しいものは優しいものだ

 前日に入れて、その半分以上も使ってしまった魔法瓶の湯。
 その湯の残った魔法瓶に手を当てたら、ほのかに温かかった。
 その時、本作中の<私>は、寂しさと優しさを感じた。
 「寂しいものは優しいものだ」は、小林一茶の句境を思わせて佳し。
     〔答〕 真夜中のお小水から湯気あがる淋しいものは優しいものだ  鳥羽省三


(ほたる)
    やわらかいオヤスミヒツジに誘われ毎夜眠りの魔法にかかる

 「オヤスミヒツジ」とは佳く名付けたもの。
 その「やわらかいオヤスミヒツジに誘われ毎夜眠りの魔法にかかる」、作者の童心に拍手を。
     〔答〕 お馴染みのほたる短歌に誘われ舌鋒鈍る一首切り裂き  鳥羽省三


(都季)
    はぜながら夏の魔法は解けてゆく 線香花火がぽたりと落ちて

  『線香花火』
          作詩・作曲 : さだまさし

ひとつふたつみっつ 流れ星が落ちる
そのたびきみは 胸の前で手を組む
よっついつつむっつ 流れ星が消える
きみの願いは さっきからひとつ
きみは線香花火に 息をこらして
虫の音に消えそうな 小さな声で
いつ帰るのと きいた

あれがカシオペア こちらは白鳥座
ぽつりぽつりと 僕が指さす
きみはひととおり うなづくくせに
みつめているのは 僕の顔ばかり
きみは線香花火の 煙にむせたと
ことりと咳して 涙をぬぐって
送り火のあとは 静かねって

きみの浴衣の帯に ホタルが一匹とまる
露草模様を 信じたんだね
きみへの目かくしみたいに 両手でそっとつつむ
くすり指から するりと逃げる
きみの線香花火を 持つ手が震える

揺らしちゃ駄目だよ いってるそばから
火玉がぽとりと落ちて ジュッ
                     (無断引用、篤くお詫び申し上げます)
     〔答〕 どうせなら鼠花火をやりなさい浴衣の裾が乱れてチュー  鳥羽省三  


(近藤かすみ)
    開けたれば裡に銀(しろがね)ひかりたる魔法瓶つねは闇を抱けり

 「裡に銀ひかりたる」と言い、「つねは闇を抱けり」と言い、作者は対象を良く観察し、その特徴を把握している。
 「つねは闇を抱」きつつ、「開けたれば裡に銀ひかりたる魔法瓶」は、優れた感性を持つ詩人の如し。
     〔答〕 花柄の衣装を纏い闇を抱く魔法瓶とはいかなる女性(にょしょう)  鳥羽省三 


(佐山みはる)
    この先に魔法使いが住むやうな古家がありてアロエ花咲く

 アロエの花とは、あの月下美人の花に似た、あの花のことであろうか。
 もしそうならば、本作の一、二、三句の「この先に魔法使いが住むやうな」という表現にも、並々ならぬリアリティが感じられる。
     〔答〕 この家に幸(さち)すくなかる女子(をみなご)が棲む如くして夕顔咲けり  鳥羽省三


(久野はすみ)
    父がまだ魔法使いでありし日の呪文をききしかヤツデの花は

  今となっては粗大ゴミ以外のなにものでもない、この鳥羽ですらそうだったのだから、「父がまだ魔法使いでありし日」は確かに存在した。
 その華やかなりし日、魔法使いであった父は、猫の額ほどの広さでもない庭に咲くヤツデの花に向かって、どんな呪文を唱えたのか?
 「あぶらかだぶら、私のボーナス袋よ、もっともっと厚くなり、女房子供を喜ばせろ」「ちちんぷいぷい、私の子供たちの通知表よ、5ばかり並べろ」などなど。
 「ヤツデの花」が宜しい。
 あの、いつ咲いたか咲かないかも判らない「ヤツデの花」なら、きっと「魔法使いでありし」「父」の唱える呪文を聞いているに違いないから。
 それともう一点。
 作者の<久野はすみ>さんは、かつてのクリスマスイブの日のご尊父さまのことを思い起こされて、「父がまだ魔法使いでありし日の呪文をききしかヤツデの花は」という、この一首をお詠みになられたのでありましょう。
 時あたかも、ヤツデの花の花盛りですから。
     〔答〕 吾がまだ魔法使いでありし日よ永久に帰らぬあの若き日よ  鳥羽省三


(HY)
    その腹にカラフルな花咲かせてる魔法瓶居た昭和懐かし

 我が家の食卓の上に鎮座まします魔法瓶のお腹にも、確かに「カラフルな花」が咲いていた。
 末尾を「昭和懐かし」としたのはやや安易な措置とも思われるが、「その腹にカラフルな花咲かせてる魔法瓶」が台所や食卓の上に「居た」風景は、いかにも昭和らしい風景であるから、それも致し方ないか。
    〔答〕 その腹にいかな策謀抱きつつ中国旅行したかなにがし  鳥羽省三
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鳥羽省三さま

丁寧に鑑賞してくださり、ありがとうございました。
伝えたかったことが、鳥羽様に届く歌が詠めたことを
大変嬉しく思います。
ありがとうございました。

ありがとうございます☆

鋭いご指摘ありがとうございます。たしかに、後半の字余り、しかも「れて」「レラ」「れず」と舌もつれそうですね。(*^_^*)
南瓜煮るオバサンも、みんなシンデレラ願望のなれの果て。
煮崩れたシンデレラです・・・。笑

No title

エヘヘ・・・ このお題、逃げました(笑)
いやどうも、ファンタジックな単語は苦手でして。
でもみなさん、巧みに詠まれていますよね。猛省しております。

 曽祖父は信濃の豪農連帯の保証うけあい全てうしなふ

こんばんは!

鳥羽さま、わかります?
私、まだホントに未成熟で・・・^^
これからオヤスミヒツジ抱いて寝ます。
おやすみなさい・・・zzz

ありがとうございます

尊敬させていただく鳥羽様の鑑賞のリストに入れていただきまことに光栄です。

魔法瓶に残る中途半端な温もりは「寂しくもあり優しくもあり」と思って詠いました。
自分の余生もたぶんそんな感じで過ぎてゆくのだと思います(笑)

私の拙い歌で一茶の句境まで感じていただき身に余る思いです。

ありがとうございました。
プロフィール

鳥羽省三

Author:鳥羽省三
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