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一首を切り裂く(056:アドレス)

(こうめ)
    「せーのっ」て二人同時にアドレスを消せば思い出わずかに明るく

 使い方が通りいっぺんなものになりがちな<お題>「アドレス」を、よく生かした傑作です。
 歌い出しの「『せーのっ』て」が特に宜しく、また、それと末尾との照応もたいへん宜しい。
     〔答〕 「どっこいしょ」と声上げて立つ朝の卓 三度三度が今じゃ面倒  鳥羽省三                                


(磯野カヅオ)
    文字を書くそばから滲む夕立の日に教はりしアドレス 読めん

 「文字を書くそばから滲む夕立の日に教はりしアドレス」という言葉運びが宜しい。
 こうした言葉の運び方を、古典和歌の世界では「序詞」と言いますが、本作の場合は、「アドレス」以前の語句にも意味がありますから、「有心の序」に当たりましょう。

     〔答〕 そのかみのあたり前田のクラッカー藤田まこと氏再起不能と  鳥羽省三
 こちらは、「無心」と「有心」の境目か?
 その昔、有楽町駅前にビデオホールというテレビスタジオが在って、毎週一回、藤田まこと主演の『てなもんや三度傘』の生撮りが行われておりました。暇人の私は、毎回欠かさずその生番組の見物に出掛け、両の掌が痛くなるほどの拍手をしてました。あの藤田まことさんが再起不能とか。


(ほたる)
    ホルマリン液に浸け込むアドレスをいくつも永久保存している

 一、二句は、「ホルマリン液に浸け込む」ではなく、「ホルマリン液に浸け込み」ではないでしょうか?
 その違いはほんの些細なものですが、そこの辺りの微差に気づくのが、歌人の感性というものではないでしょうか?
 発想が優れているだけに、そうした小さな失着が惜しまれます。
 それはそれとして、寡聞にして私は、アドレスのホルマリン浸けは見たことがありません。蛍のホルマリン浸けは見たことがありますが。
     〔答〕 酔いどれてドブに漬け込みアドレスはお釈迦様でもご存じあるめえ  鳥羽省三 

 と、ここまで書いて、早速「公開」したところ、作者の<ほたる>さんから、ご丁重なるメールを頂戴した。
 そのメールに曰く。
 「鳥羽さま、こんばんは! 毎回、学習させていただいております。ありがとうございます!!私は『漬け込んだアドレス』を詠いたかったので『漬け込む』としました。確かに一字でずいぶん歌は変わりますね。私の言い方が間違っているのでしょうか? アドレス帳に残っているけれど塩漬け状態でずっとずっと使わないアドレスを表現したかったのですが・・・。 消すこともできず、ただただ私のアドレス帳に漂っている無数のアドレスのことを。。。2009-12-15 23:32 ほたる 」と。

 <ほたる>さん、私の拙く失礼な短評をご愛顧下さり、真に有難く、篤く御礼申し上げます。
 まして、「毎回、学習させていただいております。」とお書き頂いたことに及んでは、「穴が在ったら入りたい」とは、今の私の心境を表わした言葉ではないかとも思われます。
 ご挨拶はこの程度にして、本題に入ります。
 上掲のメールを熟読して推すに、作者は本作を二句切れの作品としてお詠みになられたらしい。
 しかし、それでは、「アドレスを永久保存するためにホルマリン漬けにする」という、動作主の「行為」を詠んだことになり、お申し越しの如くの「私は『漬け込んだアドレス』を詠いたかった」「アドレス帳に残っているけれど塩漬け状態でずっとずっと使わないアドレスを表現したかったのですが・・・。 消すこともできず、ただただ私のアドレス帳に漂っている無数のアドレスのことを」という目的は果たせないのでないでしょうか?
 私の改定案「ホルマリン液に浸け込みアドレスをいくつも永久保存している」は、「アドレスを永久保存するために、ホルマリンに漬け込みたい」ないしは、「アドレスを永久保存するために、ホルマリンに漬け込もう」という、作者の願望や衝動を詠んだというよりは、ややどっちつかずの面はありますが、「ホルマリン漬けにされて永久保存されているアルバム」を詠んだという側面が強いので、あのような提案をした次第でした。
 しかし、本作は、「漬け込んだアドレス」を歌うよりも、「永久保存するために、アドレスをホルマリン漬けにしよう(したい)」という、動作主の強い衝動ないしは願望を詠んだ方が、更に一段と良い作品になりますから、原作(二句切れ)に、少し手を加えて、次 のようにされたら如何でしょうか。
     〔答〕 ホルマリン液に浸け込む 我が胸に永久保存したいアドレス
 
     
(都季)
    「川岸の大きな栗の木の上」がひと夏だけの僕らのアドレス

 『トムソーヤーの冒険』や坪田譲二の童話などにそんな場面が無かっただろうか、とあれこれ思案してみましたが、思い当たりませんでした。
上の句中の「川岸の大きな栗の木の上」は、「大きな栗の木の下で、あなたとわたし、仲良く遊びましょう。大きな栗の木の下で」という、あの歌から発想したものでしょうか?
 ところで、私の経験からして、川岸に栗の木が生えている光景を見たことがありません。まして人が昇って小屋掛け出来るほどのは特に。
 そこで、本作に現実感を付与するためには、冒頭の「川岸の」を、「崖上の」とか「背戸裏の」とか「里山の」などに替えるとか、或いは、「栗の木」を川岸に生えるに相応しい木に替えたら如何なものでしょうか。

     〔答〕 里山の巨木の楢の木の洞(うろ)がこのひと夏の僕のアドレス  鳥羽省三
 などとすれば、「僕」とはクワガタかカブトムシか、などとの連想が広がり、一首全体にメルヘンチックな雰囲気を与えることが出来ると思うのですが。


(bubbles-goto)
    アドレスをいくつもたどりここに来たホームページに焚き火のあかり

 「焚き火のあかり」が灯っているような「ホームページ」があったなら、「アドレスをいくつ」辿ってでも出掛けたいと、私は想います。
 でも、そんなホームページはなかなか見当たりません。
     〔答〕 願はくば見沼田圃の畔にて焚き火のあかり灯さむと想ふ  鳥羽省三


(茶葉四葉)
    携帯のメールアドレス聞くほどの軽さでなくて重さでなくて

 「軽さ」はご当人たちのご性格。
 「重さ」はご当人たちの御仲。
 その性格もブライドも振り捨てて、「メールアドレス教えて」と茶葉四葉さんが言い出さない以上、事態は一向に改善されません。
     〔答〕 茶葉四葉の重さは所詮数グラム軽さも軽し風吹けば飛ぶ  鳥羽省三
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えっと・・・

鳥羽さま、こんばんは!

毎回、学習させていただいております。
ありがとうございます!!

私は「漬け込んだアドレス」を詠いたかったので「漬け込む」としました。
確かに一字でずいぶん歌は変わりますね。
私の言い方が間違っているのでしょうか?
アドレス帳に残っているけれど塩漬け状態でずっとずっと使わないアドレスを表現したかったのですが・・・。
消すこともできず、ただただ私のアドレス帳に漂っている無数のアドレスのことを。。。

ありがとうございます。

ごぶさたしております。
「アドレス」はよく使う言葉なのに、歌にうまく入らない単語の一つでした。
かなり悩んだテーマだったので、選んでいただいてうれしいです。

「朝の卓」は普段使わないのに、「どっこいしょ」とともに、とてもリアリティを感じました。
短歌と言葉の関係って不思議です。

ありがとうございました。
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