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一首を切り裂く(053:妊娠)

 軽めです。出詠歌はいずれも軽めです。これでは、どなたかが主唱されている「かんたん短歌」みたいではありませんか?
 こんな歌ばかり目にしていると、私はとても悲しくなり、あの、「晩餐ののち鉄瓶の湯のたぎり十時ごろまで音してゐたり」と詠んだ方のことを思い出してしまうのです。
 そういう訳で、今日は、鬱のどん底に在る私自身を救うために、思い切って軽めの観賞をしましょう。


(小早川忠義)
    「妊娠」の項に付きたる開き癖我が家に残る医学辞典の

 我が家には、「医学辞典」と名乗るような立派なものは無かったのですが、その代わりを果たしたのが、婦人倶楽部の赤や黄色のページ。
 そのページにも、明らかな「開き癖」がついておりましたよ。
 「妊娠」とは無縁の、少年の私まで開いてみたりして。
     〔答〕 フランス装めかしてるのか数ページ袋閉じなるピンクの頁  鳥羽省三 


(星野ぐりこ)
    妄想を直ちに出産したいので誰か妊娠させて下さい!

 想像妊娠ならぬ妊娠妄想に捉われた挙句、「その状態から一日も早く脱却したいから、どなたか私に、本物の妊娠をさせて下さい」とせがむのは、妄想ならぬ暴走。
 犬に狂犬病の予防注射をするのとは違いますから。
 <ぐりこワールド>ただいま全開、絶好調、出血サービス中。
     〔答〕 妄想を出産するのは所詮無理まだ間に合うよ中絶したら  鳥羽省三


(うたよみブログ)
    妊娠を夫へ何と告げようか メールの件名「パパへ」と入力

 「メールの件名『パパへ』と入力」という下の句が絶妙の効果を上げている。
     〔答〕 昇格をワイフへ何と告げようか、メールの書き出し「課長夫人へ」  鳥羽省三
         「あなたへ」が「パパへ」と替わるケイタイのメールの件名待たれる帰宅   同


(蓮野 唯)
    縄を掛け重石引き摺る苦しみの妊娠後期ゴールは間近

 「重石」は<おもし>と読むのでしょうが、昨今の歌人ちゃんたちなら、そうは読めずに、「二句目の字余りが気になる」などと言い出しますよ。
 それに、「妊娠後期ゴールは間近」も聞き捨てになりません。
 私は、高齢出産に命取られた人の噂を沢山耳にしております。
 呉々も御身大切に。
     〔答〕 縄掛けぬ重石もたげるリハビリを毎週三度やらされてます  鳥羽省三


(陸王)
    妊娠のお題、男子は外へ出てソフトボールで三振・四球

 そういうことが確かありましたね、中学生の頃。
 あれは、女子生徒にとっては勿論、男子生徒にとっても、一種の<通過儀礼>に他なりません。
 「誕生・お七夜・七五三・小学校入学・同卒業・中学校入学」に続いての。
     〔答〕 教室を気にしてばかりでピッチャーがなかなか球を投げてくれない  鳥羽省三


(久哲)
    妊娠をしているような食感の水羊羹は夏に冷たい

 「妊娠をしているような食感」とは、<ピチピチ感>を言うのでしょうか?
 それとも、<ゾクゾク感>か<ふわふわ感>を言うのでしょうか。
 いずれにしても、とても新鮮な言い方です。
 和菓子屋のコピーとしても十分に使えます。
 夏は<水羊羹>、冬は<いちご大福>のコピーとして使えましょう。

     〔答〕 <妊娠をしているような触感>の<いちご大福>期間限定  鳥羽省三
 どうですか、久哲さん。
 あなたの元歌よりも、私の返歌の方がかなり上等でしょう?
 「食感」を<触感>と替えたのは、変換ミスではありませんよ。
 <水羊羹がいちご大福を産んだ>とは、このことを指して言うのでしょうか?


(ウクレレ)
    ラーメンを食べつつ妊娠告げられてナルト見つめる眼鏡が曇る

 「ナルト」が胎児に見えたのでしょうか?
 しかも、この妊娠は<婚外妊娠>ですな。
 「眼鏡が曇る」のは、あつあつのラーメンから立ち上る湯気のせいばかりではありません。
     〔答〕 目玉焼き食べてる時に告げたなら目玉が目玉を凝視するのか?  鳥羽省三


(ほたる)
    「妊娠」と書かれた箱が笹舟で運ばれている夢を見た朝

 実に叙情的かつ新鮮な感覚です。
 私は、本作に接して、あの尊いお方・モーゼが、葦の舟に乗せられてナイル川に流された、という旧約聖書の記述を思い出しました。
 我が国の古事記にも、それに類似する話が見られます。
 本作の作者は、おそらく其処までは意識されては居られなかったでしょうが、優れた一首の成り立ちには、古今東西のそうした伝承が微妙に絡んで来るのです。
 そして、それは、作者の実力であり、教養なのです。
 ほたるさんの作品は、一見すると、<なんちゃって歌人>の創った<なんちゃって短歌>のようにも思われますが、そこのところが、他の歌人ちゃんたちの作品とは異なるのです。
 でも、末尾を「朝」で逃げたのはいけません。いつもの手ですね。
     〔答〕 短冊に「いろはにほへと」と書かれてた。「ちりぬるを」と添え流してやった。  鳥羽省三


(みなと)
    一分でわかる妊娠検査薬つばめよつばめ 慈雨にぬれるか

 「一分でわかる妊娠検査薬」という上の句と、「つばめよつばめ慈雨にぬれるか」という下の句との微妙な響き合いが面白い。
 これを俳諧では、「匂ひ付け」と曰うのでしょうか?
     〔答〕 妊娠と判った朝は空翔る燕と共に濡れてもみたい  鳥羽省三 


(穂ノ木芽央)
    妊娠の自覚なかりきをさな妻緋色の毛糸玉もてあまし

 過去回想の助動詞「き」が効いている。
 あの頃は、何も知らない<ねんね>で、膝の上に転がる、「緋色の毛糸玉」など「もてあまし」てた。
     〔答〕 妊娠の自覚なければ幼な妻ゴム段などを軽く跳んでた  鳥羽省三


(斗南まこと)
    例えれば妊娠判定薬が出す陽性反応みたいな静けさ

 妊娠という<お題>は、決まり切った結論を導き易いだけに、面白くなく、厄介な<お題>であろう。
 それを苦にせず、「静けさ」の直喩としたのは作者の手柄である。
     〔答〕 例えれば百万石のお江戸入り小沢一行中国視察  鳥羽省三


(bubbles-goto)
    妊娠や堕胎のうわさ脱ぎ捨てて波打ち際を駆けるグラビア

 「グラビア」は<グラビア・クイン>などの略称か。
 いかなる醜聞も、一時の恥として綺麗に脱ぎ捨て、彼女らは恥も外聞も忘れて、繁華街や海浜に遊び、我が家のテレビの大型画面にも顔を映す。
     〔答〕 おめでとうクサナギ君も復活ねナカイ・キムタク彼に敵わぬ  鳥羽省三


(扱丈博)
    妊娠をしているようなひらがなをふたつ重ねた名前をもらう

 「妊娠をしているようなひらがな」とは何か?
 そして、それを「ふたつ重ねた名前」とは何か?
 「妊娠をしているようなひらがな」として怪しいのは、<な行>の三字、及び<ま行><や行>の二字。
 そして、それらを二つ重ねた名前とは、「なな・ねね・のの・みみ・もも・やや・ゆゆ」など。
 そんな名前の女性なら「妊娠をしているような」と言うよりも、本作の作者の<扱丈博>氏は、そんな名前の女性を「妊娠させたい」と思って居られるのでしょう。
 因みに、作者の姓の一字「扱」とは、「扱き紐」の「しごき」である。
     〔答〕 妊娠をさせる危険のある犬を連れて行くのは保健所かしら  鳥羽省三


(今泉洋子)
    小春日はかくもやさしくわが背(せな)に妊娠記憶よび覚まさせぬ

 お年がお年ですから、縁側では小春日に優しく労わられ、バスの車中ではやさしく席を譲られる。
 されど、「一首を切り裂く」者の扱いは、かくも容赦無し。
     〔答〕 すごろくに例えてみれば「上がり」だね小春日の刺す縁にて思う  鳥羽省三


(夢雪)
    妊娠をすることのなき少年を何度も愛して肌馴染みをり
(桶田沙美)
    妊娠を気にせず身体重ね合う女を愛する女で良かった

  「少年愛と同性愛とは布の綾目の表裏」ですから、二首まとめて観賞することにしよう。
 「摩るだけ、触るだけでは妊娠しない」などと言ったら、「お前は何も知らないな」と、その道の奥義を極めた方々に笑われてしまうでしょうか。
 察するに、<夢雪>さんも<桶田沙美>さんも女性でありましょう。
 女性が女性と「身体重ね合う」。
 大人の女性が「少年を何度も愛して肌馴染みをり」。
 恐ろしい恐ろしい、ここまで来れば世も末じゃ。
 作者と作中人物とを切り離して考えるのが、短歌観賞の常識であることは承知してはいるが、今の私は、身体の震えが止まらない。
     〔答〕 「あれれれ」と呆れてばかり居る私、鳥羽はなんにもご存じ上げぬ  鳥羽省三
    

(田中ましろ)
    精子らが卵子と出会う瞬間に小田和正が流れて妊娠

 本作に接した瞬間、私はあの名曲のあのフレーズを思い出してしまいました。
 「もう終わりだね、君が小さく見える」(小田和正『サヨナラ』より)
 でも、そうではありませんね。
 「あのことが果てた後、君の君が小さく見えたから」なんてことではありませんね。
 私としたことが、つまらない妄想に耽っていました。本当に失礼致しました。
 寝室の中でCDやMDの音楽を流したまま眠ることがよくあります。
 この頃の私は、さだまさしの「ソフィアの鐘」を流したまま眠ります。
 本作の作者<田中ましろ>さんの場合は、パートナーの方を懐妊させたと思しき場面でのBMが、小田和正の曲だったのでしょう。
「ラブ・ストーリーは突然に」か何か。
    何から伝えればいいのか 分からないまま時は流れて
     浮かんでは 消えてゆく ありふれた言葉だけ
      君があんまりすてきだから

 あの曲はなかなか宜しい。
 そうそう「生まれて来る子供たちのために」という、場面にピタリのもありましたよね、確か。
     〔答〕 何事も伝えない儘このままに観賞文を閉じます失礼  鳥羽省三 
 

(理阿弥)
    弱腰の釈明として妊娠の重さを諭し 今この空気

 理阿弥さんちにも年頃の娘(或いは孫娘)さんがいらっしゃるらしい。
 「阿弥子や、お前、妊娠とはこのお腹の中に一個の生命を宿すことだよ。子供が子供を産むなんて、これは見たことも聞いたことも無い。結婚はお前にはまだ早い。そうそうに始末しなさい。」とかなんとか諭した挙句のこの始末。
 と、書いてはみたものの、理阿弥さんは意外に若く、未だ婚前交際中の若者なのかも知れない。
 すると、
 「阿弥子さん。いずれ私は、貴女と結婚したいと思ってはいますが、まだパパになる自信も生活力もありません。だから、だから、だから、・・・・・・・」なのかも知れない。
     〔答〕 いずれにせ、諭した挙句のこの空気、梅干食う気はあるのかしらん  鳥羽省三  


(髭彦)
    妊娠をもたらすことの生涯にひとたびにして子もひとりなり

 「妊娠をもたらすことの生涯にひとたびにして」の意味がやや不分明です。
 この一文は、ややもすると、「女性に妊娠をさせてしまう結果に到るような行為を、私は、生涯に一度しか為したことがありません」とでも、読まれかねません。
 でも、まさかねー。
 先生が神様であった時代はとうに過ぎ去ってしまったのですから。
     〔答〕 甥と違ひ婚姻は一度せしのみなれど男子(をのこご)二人持ちたり  鳥羽省三


(のびのび)
    「妊娠は可能なのです、なのですが」事務的に告ぐ産科医の声

 「なのですが」が効いている。
     〔答〕 「なのですが、母体が細腰、骨盤が」後は朦朧語尾を濁せる  鳥羽省三


(五十嵐きよみ)
    妊娠はあした見る夢 海からの風に翻弄されるパーカー

 あのご仁が、『太陽の季節』なる三文小説をものしてから、いったい何年になるのかしら。
 近頃は、都民の迷惑顧みず、またぞろ五輪を口にして。

 「海からの風に翻弄されるパーカー」という瀟洒なフレーズに刺激され、つい愚痴を零してしまって失礼。
     〔答〕 知事からの無常な風に翻弄され悩み耐えない都民ぞ我ら  鳥羽省三 


(美木)
    妊娠したかもと言ったら笑ってた 違ったと言ったらもっと笑った

 前者の笑いは苦しい笑い。
 後者の笑いは嬉しい笑い。
     〔答〕 「合格したかも」と言ったら怒ってた「<かも>は無いだろはっきり言え」と  鳥羽省三 


(おっ)
    弁当にレモンが入っているだけで妊娠疑惑に沸いた教室

 あまりにも平和過ぎる学園風景。
 この光景をどこかの大統領が見たら、「この平和は、我が国の核抑止力と、貴国と我が国との安保条約に守られた平和だ」などと言い出しかねませんよ。
 折しも、今日は、ノーベル平和賞の授賞式が。
     〔答〕 梅干が一粒だけの弁当を<日の丸弁当>と言ってた頃よ  鳥羽省三
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一発でも妊娠(下品)

省三様。
なんじゃかんじゃと言いつつ
僕はともかく、皆様の良いお歌選んでいらっしゃる。

元気出してくださいよ、これはお題が少々悪い。
僕にすれば、まだ → の方が汎用性がありますね。

男のクセに甘味好きなんで、いちご大福と水羊羹。
迷うな。あ、両方食えばいいのだ!

ありがとうございました。

駿河屋の鳳志よう様豹柄のマタニティドレスなんぞいかがか 久哲

少年愛の美学

こんにちは。
鳥羽さま、選歌と返歌、ありがとうございます。

こういう解釈も面白いですね。
そうか、大人の女性がそう言っても、怖いものがありますね。

でも、私は男性ですよ、一応(笑)。
今回は、森鴎外の娘さんの森茉莉の「枯葉の寝床」等のイメージで何首か詠みました。

歌は、作った時点でどう解釈されても仕方ないものですが、
様々な解釈ができて、面白いですね。

ありがとうございました。

再返歌

世が世なら子の三人もいようもの生活力とは重たい響き

軽めの返歌

鳥羽省三さま

たびたびお招きいただきありがとうございました。

またまた苦手な「妊娠」の拙作を、小春日のように暖かく読んでいただき感謝申しあげます。

☆こんなにも切りさきうまきあなたゆゑ秘め事うまき青春最中

☆弟子入りは止めにしやうか秘め事で妊娠しさうな青春最中

軽めの返歌で失礼いたしました。小春日の縁側でお互いにゆっくり歌でも詠みながら青春最中をたべませう。

やっちゃいました!

鳥羽さまのご指摘通り、「逃げ」道ですね^^;

来年の題詠はもうちょっとマシに詠めるようになりたいと思います。

妊娠と燕の「取り合わせ」

拙歌、とりあげていただきありがとうございます。

題詠blog2009はうっかりしている間に〆切が過ぎて、
完走を逃してしまいましたが、丁寧に読んでくださる
鳥羽さんのような方がいて参加した甲斐がありました。

数年前に題詠100首に参加したときに、鑑賞も
同時にしたことがあって、そのときかなりタイヘンだった
ことを思い出しました。

妊娠というテーマで歌が軽いといのは、意外なような
そうでないような。重大事ですので、真正面から
向き合うのエネルギーがいるのでしょうね。

妊娠と判った朝は空翔る燕と共に濡れてもみたい  鳥羽省三

鳥羽さんの歌を読んで、妊娠と燕の「取り合わせ」のよさを
確認いたしました。俳句でやると「つき過ぎ」になるかも
しれませんが・・・。

No title

はじめまして。
自称百合歌人、桶田 沙美です。

>恐ろしい恐ろしい、ここまで来れば世も末じゃ。

普段の(百合)短歌なら「可愛い歌ですね」「恋する気持ちに同性も異性も大差ない」と言ってもらえたら嬉しいのですが、採り上げていただいた歌に関しては、異性愛者にはそう捉えてもらえた方がありがたいです。
「拍手はいらぬ、ブーイングをくれたまえ」(by HONDALADY)の心で。
この歌は同性愛者を批判する際に向けられる「子供が出来ない」ことを、快楽主義の観点から逆に「ポジティヴ・シンキング」した歌ですので。

と、挑発的な事を書いていますが、女性と女性が肌を合わせて愛を共有することが、今でも「怖い」と言われるとは同性愛者と異性愛者にはまだまだ分厚い壁が存在するのだなぁ、とも思ったりもしています。

No title

歌を取り上げていただきありがとうございました。
実際夫へ妊娠の報告をしたとき
件名に「パパへ」だったかどうか
もう記憶は定かではありません(笑)。
うれしさと不安と、言葉では例えようもない気持ちを
文字で表現することなどできるはずもなく
淡々と事実をメールで送ったような…
夫を「パパ」にしてくれた娘はもう9歳です。

ありがとうございます

妊娠はおそらく女性にとっては人生の一大事だと思うのですが、男性にとっても場合によっては一大事でしょう。
そんな時にどのように構えられるかが、性別問わず大切なのかも。
残念ながらそのような場に居合わせたことはまだないのですが。
プロフィール

鳥羽省三

Author:鳥羽省三
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