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一首を切り裂く(044:わさび)

(近藤かすみ)
    ギヤマンのつゆの器のうちがはをつうと落ちゆくわさび さみどり

 「つゆの器」とは<蕎麦猪口>のこと。
「ギヤマンの」とあるから、その<蕎麦猪口>は<ガラス製の蕎麦猪口>である。
 一首の意は、「ガラスの蕎麦猪口の内側をつうと滑り落ちて行く山葵。その山葵は鮮やかなさみどり色でとても美しい」といったところか?
 「わさび」と「さみどり」の間の一字空きを無視してはならない。
 「つゆの器のうちがはをつうと落ちゆく」と、<つ音><ち音>の五連続が耳に心地よい。
それから、これは、作者の近藤さんとしても、想定外のことではありましょうがもうひと言。
 「つうと落ちゆく」の「つう」から、私は、木下順ニ作の戯曲『夕鶴』に於いて、山本安英さん演じる、ヒロインの「つう」を思い出しました。
 「つうと落ちゆく」、─── 己の欲望が因を成して、愛妻<つう>を失ってしまった後の「与ひょう」の生活はどうなり、彼は何処に落ちていったのでしょうか。
 <つう>が去って行った夕空に向かって、「つう」「つう」と呼び掛けていた、彼・与ひょうの姿が、まざまざと思い起こされました。
      〔答〕 朝捕れの刺身の皿に添へられて山葵さみどり湯ヶ島の宿  鳥羽省三
          かりそめの幸に酔ひ痴れ「つう」と呼び「つう」と堕ち行くをとこのあはれ  同

(あみー)
    薬味など辞めて独立するというわさびはきっと前途多難だ
 
 こちらはまた、自由奔放な「わさび」くん。 
 私の知人の経営する山菜レストラン<碌さん>の人気のメニューは、安曇野直送の新鮮な山葵を用いての、「お刺身風スライスわさび」に「花わさびの胡麻和え」など。
 これらのメニューでは、「わさび」がただの薬味であることから脱却して、一人前の立派な食材になっている。
 だから、「わさび」くんの「独立」は、あながち「前途多難だ」とばかりは言えません。
      〔答〕 為せば成る為さねば成らぬ何事も茄子のならぬは芽欠き不足だ。  鳥羽省三


(jonny)
    わさびでも唐辛子でも入れてくれ どんなジョークも受け止めてやる
 
 <jonny>さんお得意の開き直り。
 さぞかし辛口のジョークが飛んで来るかと思いきや、「相変わらずの出来栄えです。あなた様は、今や、インターネット短歌界の至宝(いや、痴呆)です(jonnyへの伝言)」などと外されてギャフン。
     〔答〕 草鞋でも破れ傘でも入れてやれ今夜は闇鍋<jonny>に喰わそ  鳥羽省三


(西中眞二郎)
    わさび田に吹く風涼し安曇野の夏限りなく緑に染まる

 安曇野を旅したのは、十数年前の夏の日のこと。
 大王わさび農場の三連水車と、碌山美術館の静寂と、道端の道祖神と、それに名前は忘れたが、軒先に風鈴を吊るした硝子工房も訪ねた。
     〔答〕 安曇野の旅なつかしき道端の道祖神らも手を携えて  鳥羽省三


(わだたかし)
    「スイマセン、わさび抜きで」と堂々と言えるオトコに成長したい

 「わさび抜き」は子供のお寿司。
 なのに、「『スイマセン、わさび抜きで』と堂々と言えるオトコに成長したい」とは、なんという、ふざけた<成長願望>であることか。
 そのパラドックスが、堪らなく面白い。
 「スイマセン」にも幾通りかあるし、「成長」にも、いろいろある。
     〔答〕  「すいません、六百円なら吸わない」と言える男になりたい僕は  鳥羽省三
 <わだたかし>さんよりは、鳥羽省三の方が、よほどまともだ。


(久哲)
    じゃんけんで無敗を誇る沢蟹がイチクボさんのわさび田にいる

 またまた、まともでない人の歌を目にしてしまった。 
 「イチクボさんのわさび田」の所在地は、安曇野ですか?天城ですか?
 それにしても、この「じゃんけん」の相手は間抜け。
 チョキしか出せない「沢蟹」との勝負なら、グーを出し続けたら連戦連勝なのに。 
     〔答〕 かど番で陥落真際の大関がここ一番の奥の手を出す  鳥羽省三
 「奥の手」とは、あの奥の手。
 四十八手以外のあの手。
 <無気力相撲>などという曖昧な言葉でごまかして、彼を大関の座に置いている、相撲協会もまともではないのでしょうか?


(柚木 良)
    ぴかぴかに磨いた部屋でひからびたわさびを握りトラックをまつ

 引越し荷物を残らず玄関先に出し、床から天井まで部屋中をぴかぴかに磨き上げ、後は、<アート引越しセンター>のトラックの到着を待つだけ。
 「ひからびたわさび」は、きっと冷蔵庫の下にでも転がっていたのでしょう。
 声を上げて泣きたい夜もあった。
 この部屋での三年間の暮らしのことを思えば、この「わさび」にも、ひとしおの愛情が感じられてならないのだ。
 「わさび」も「ひからびた」が、私の涙も干乾びた。
     〔答〕 開け放つドアからの風涼しいね綺麗さっぱり忘れてUターン  鳥羽省三


(蓮野 唯)
    粉わさび捏ねる係に指名され涙こらえてボール抱える

 町内会の秋祭りの一コマか?
 そう言えば、作者のお住まいになられる県の隣県で、あの「カレーライス殺人事件」が起きたのも、町内会の秋祭りの時ではなかったっけ。
 容疑者として逮捕されたのは<カレー係>の主婦。
 同じく主婦の蓮野さんは「粉わさび捏ねる係」。
 その気になれば、チャンスはいくらだってあるよね、蓮野さん。
 でもねー、まさかねー。
 あれあれ、蓮野さんは、「涙こらえて」「ボール」なんか抱えているよ。
 あの様子では、「今日のメインの三輪そーめんのお汁に毒が入ったいた」なんてことにはならないな。
 パン屋がつぶれて昼飯抜きだったから、蓮野さんの「捏ね」た「わさび」を効かして、もりもり食べよう三輪ソーメン。
     〔答〕 「粉わさび捏ねる係」の監視役に任命されて食べる暇なし  鳥羽省三


(暮夜 宴)
    泣いたのはみんなわさびのせいだからもうかっぱ寿司なんか行かない

 作者は、字余りの破調を好むお方らしいが、「泣いたのはみんなワサビのせいだから河童寿司には二度と行かない」では、駄目なのかしら?
     〔答〕 宴会の盛りも過ぎたその暮夜にあの娘(こ)誘って出掛けた寿司屋  鳥羽省三
         泣いたのはワサビなんかのせいじゃないみんな貴方が悪いの 今夜  同


(五十嵐きよみ)
    気の抜けたわさびのような皮肉しか言い返せずによけい悔しい

 「気の抜けたわさびのような皮肉」にも、辛味は無いが色気はあるはず。
     〔答〕 気の抜けたビールのような歌詠んでゴマカス気かな五十嵐さんは  鳥羽省三
 
    
(磯野カヅオ)
    ヒンドゥの酷暑は若き日々に似て冷たいそばにわさび効かせり

 「ヒンドゥの酷暑は」とあるが、これは、「ヒンドゥ教寺院での酷暑に苦しんだ日々は」といった意味であろうか。
 或いは、「ヒンドゥ教の厳しい戒律は」の意味であろうか。
 もし、前者だとすると、一首の意は、「ヒンドゥ教寺院での酷暑に苦しんだ日々の生活は、日本での若い頃の私の生活に似ていて、例えば、あの冷たい蕎麦にわさびを効かせて食べる、といったような、パンチが効いて、刺激に満ちた生活であった。」とかなんとか。
 もし、後者だとすると、「ヒンドゥ教の戒律は、私が若い時に毎日食べた蕎麦の味に似て、ワサビが効いていて、かなり厳しかった」といった意味になろうか?
 磯野カヅオ氏の作品は、相変わらず難解。
 解ったようで解らない。
     〔答〕 満州の日々は凍えて口を閉じ流行唄(はやりうた)さえ歌わなかった  鳥羽省三
 磯野カヅオ氏の作品に較べれば、この鳥羽省三の返歌の素直さは、まるで汚れ無き少女の歌う唱歌のようだ。


(月下燕)
    初対面の男の人がことわりもなしにわさびを醤油にとかす

 中華街でのお月見の宴での出来事でしょうか?
 その「初対面の男の人」とは、円形テーブルを囲んでの相席だったんですね。
 いくら相席でも、いきなり誰に「ことわりもなしに」、「わさびを醤油にとかす」なんて失礼ですよ。
 それに、中華料理にわさび醤油なんて。
     〔答〕 初対面の女子高生にキスされた それもいきなりことわり無しに  鳥羽省三


(南 葦太)
    蕎麦つゆにわさびを溶かすことの意味 刺身醤油に溶かさない意味

 テレビのグルメ番組などでは、せっかくの特上の本マグロのトロに刺身醤油をちょっと付けて、その上に溶かさないままのワサビを少し載せて食べていますね。
 それから、食べ終わるや否や、きまったように深刻顔して、「うーん」とうなったりして。
 でも、そうした気取った作法には、フォークの上にライスを載せて食べるほどの意味も無い、と私は思っています。誰が何と言っても。
     〔答〕 おそらくは魯山人らの悪巧み溶くも溶かぬも僕らの勝手  鳥羽省三 


(虫武一俊)
    「もうええわさびしい老後やろうけど長所の捏造なんてできひん」

 近頃は、<茶飲み友達>とかと言って、還暦を過ぎた男女が結婚することが多いと聞く。
 この場合の男女とは、勿論、生き別れか死に別れかは別として、或いは、最初から独身だったりして、お互いに配偶者を持っていない男女のことである。
 本作は、そういうことで、いったんは再婚を決意した高年齢の男性が、再婚に至るまでのさまざまな手続きを面倒に感じて、せっかくの決意を枉げるに至る心境を詠んだものである。
 再婚の手続きに入るには、お互いに履歴書めいたものを交換しなければならない。
 その履歴書めいたものには、「(自分の)長所」を書く欄がある。
 この男性は、この欄を埋めることが出来ないのである。
 自分には、「長所」と呼べるものが無い。
 「長所」が無いのに、「長所」の欄を埋めるには、「長所」を「捏造」するしか方法がない。
 その男性には、それが出来ないのである。
 だから、せっかくの決意を枉げて、再婚を諦める。
 この一首、「もうええわさびしい老後やろうけど長所の捏造なんてできひん」は、笑うに笑えない悲喜劇である。
     〔答〕 「もういいよ。このレポートは出せないよ。だから進級、僕あきらめる。」  鳥羽省三
 こんな手合いの怠け者の生徒を、長い教員生活の中で、私は、いったい幾人、なだめすかして進級させたことであろうか。


(今泉洋子)
    わさびまでひとつに数へ目標の三十品目けふも喰ひたり

 何処の何方が言い出したことなのか?
 「人が健康に生きるには、一日、三十品目を食べなければいけない」と。
 近頃は、「一日三十品目」という名称のサプリメントまで売られていると聞く。
 そこで、私も、今朝の食事から、小昼、昼食、お三時、夜食と、自分の食べた品目を指折り数え上げてみたが、三十品目にはとうてい足りない。
 それとは別に、私は、「一日一万歩」を目標にしている。
     〔答〕 トイレでの足踏みまでも数え上げ今日の歩数は八千二百  鳥羽省三

  
(櫻井ひなた)
    ピーマンとわさびはクリアとりあえず大人認定初級合格

 「ピーマン」を食べない子供が多いと聞くが、私は、人参・南瓜・馬鈴薯などの芋類を好んで食べる人の気が知れない。
 生きる為に仕方なく食べる、と言うのならともかく、あんな、牛馬の飼料にでもすればいいものを、「美味しい、美味しい」と言って食べるやつが私と同じ人類である、とは思いたくもない。
     〔答〕 人参と南瓜はとうとう食べられずそれでも大人まもなく<古稀>だ  鳥羽省三


(tafots)
    ステーキをわさび醤油か味噌で食う妹流儀を父も真似出す
 
 それぞれの家庭には、それぞれの流儀が在って、他所から訪れた者は、急にはそれに馴染めない。
 かく言う私は、他人の奥方たちの調理した、お手作りの料理が苦手で、その為に、親戚の家などに行っても、そうした類の物は一切口に入れない。
 そうしたことで、数年前、結婚して新居を持った長男宅を訪問した折、長男の嫁は、「お父さんは、私の作った食べ物を、全然食べてくれない」と言って、急に泣き出した。
     〔答〕 とんかつに味噌を塗(まぶ)すは名古屋流 妻は好むが俺は嫌いだ  鳥羽省三


(市川周)
    パンの耳わさび醤油で食べてみる(ひいらぎ荘は日々こともなし)

 昨年、東京の東隣りの県の街で仮住まいをしていた時、パン屋の経営者の男性から、「私の店で大量に出るパンの耳は、この近所の縫製工場に研修生として中国から来ている人たちが買って行くから、直ぐに無くなる」という話を聞いた。
 今は昔、私が東京で学生生活をしていた頃、パン屋で一袋十円で買える「パンの耳」は、私たち貧乏学生の、格好の食物であり、それを買って来て、買い置きのマーガリンを塗って、昼食代わりにした。
 その美味しく大事な「パンの耳」を、近頃では食べる者がほとんど居なくなり、本作の作者の<市川周>さんご一家などは、そのうちに、<絶滅危惧生物>に指定されるに違いない。
     〔答〕 ミルミルにわさび醤油を加えてる(ひいらぎ荘は今日も辛口)  鳥羽省三


(佐藤羽美)
    幻影のドアが開きぬゆっくりと水田わさびの黒目の奥に

 お題の「わさび」を、食物のそれとして処理せず、「黒目」の女性<水田わさび>として詠んだのは、いかにも才女・佐藤羽美さんらしいアイデア。
 佐藤羽美さんは、私が密かにライバル視している、新鋭女流歌人。
 私が年齢も考えずに某短歌誌の「短歌新人賞」に応募し、最終選考通過作まで残った時、彼女の作品も亦、私と同じ最終選考通過作として、その短歌誌に掲載されていた。
 そこで私は、密かに、彼女を私自身のライバルとして注目していた。
     〔答〕 <水田わさび>主演ドラマに脇役で今日も出てます鳥羽省三は  鳥羽省三


(bubbles-goto)
    造反という言葉あり生醤油にわさびの山が崩されてゆく

 <謀反>と言えば、明智光秀の昔から聞き慣れているのに、インテリたちは持って回って「造反」などと仰られる。
 「造反有理」という言葉が、マスコミで盛んに使われていたのは、<紅衛兵>などという、ヒットラーユーゲント紛いの少年たちが、彼の国で暴れ回っていた頃であったろうか? 
     〔答〕 背反という言葉あり豆板醤かけて氷の天麩羅食べたい  鳥羽省三


(橘 みちよ)
    休日の前夜たのしも「わさび味かきのたね」食む今夜(こよひ)つまみに
 
 「休日の前夜」、「わさび味かきのたね」を「つまみに」して、<橘みちよ>さんは、どんなお酒をお召し上がりになられるのでありましょうか。
 お相手させていただきたいね。
     〔答〕 体調のいい夜許され<チョウヤ梅酒>コツプ一杯飲むのが楽しみ  鳥羽省三


(酒井景二朗)
    納豆にわさびを入れる冒險をしようよ 夏が終つてしまふ

 「冒険」にもいろいろある。
 次女の美莉ちゃんを「初めてのお買い物」に行かせるのは、私の長男の嫁の冒険。
 彷徨(方向でもある)音痴の連れ合いを東京・銀座の三越に行かせるのは、鳥羽省三の冒険。
 民主党に国家の舵取りを委ねるのは、私たち国民の冒険である。
     〔答〕 納豆に砂糖を入れて食べたいな今年の冬は秋田で冒険  鳥羽省三


(花夢)
    そのむかし祖父が好んだわさび抜きお寿司のなかにひそむ哲学

 お年を召された方々の為される事や、仰られる言は、何かにつけて示唆に富んでいる。
 そういうわけかあらぬか?
 昨今は、インターネツトのホームページの中にも、「おばあちゃんの知恵袋」といった類のタイトルを持ったのが幾つも見受けられる。
 そこで、つい先刻、その一つをクリックしてみたら、何と驚いたことに、そこに現れたのは、某風俗店の宣伝だったのだ。
     〔答〕 今は昔、舌切雀の爺さんの小さな葛篭(つづら)の語る哲学  鳥羽省三  


(松原なぎ)
    唐辛子わさびにからしトウバンジャン君をいためる用意をしよう

 「いためる」にも幾通りか在るが、本作の「いためる」は、「炒める」であると同時に、「痛める」か「傷める」の掛け言葉。
 まさか「悼める」ではないだろう。
     〔答〕 お位牌に木魚に鉦にお線香 君を悼める仕度は出来た  鳥羽省三


(天鈿女聖)
    大量のわさび醤油が残ってるみたいな私は結婚できない

 「大量のわさび醤油が残ってるみたいな私」という表現には、それなりの現実感と説得力が感じられる。
 そんな貴女なら、やはり、辛気臭くて、ばば臭くて、残り物臭くて、誰も振り向かないでしょう。
 だから、いっそ、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、
     〔答〕 大量のわさび醤油を捨てなさい天の岩戸でダンスも踊れ  鳥羽省三


(沼尻つた子)
    さび抜きのびんとろ回る わさびから抜かれたわの字の行方を思う

 春画や春本を意味する、<わじるし>という言葉は、私にとって日常語であるが、「わの字」という言葉はほとんど聞かない。
 そこで思うに、蕉風俳諧の<わび・さび>の「わび」とは、「わさび」から「わの字」を抜いた言い方なのであろうか?
 もし、そうならば、前掛け掛けた板さんの飛ばす、「中トロのさび抜きいっちょう」というセリフは、なかなかに芸術的な言い方ではある。
     〔答〕 転居の折<書肆・中嶋>に売って来た<わじるしの>行方この頃思う  鳥羽省三
         板無しの<板わさ>廻る 蒲鉾を乗せてた板は表札になる          同 


(珠弾)
    ワンポイントでわさび投入 切り札のタバスコ投手につなぐ形を
 
 監督の采配が見事に的中して、<1対0>で珠弾チームの辛勝。
     〔答〕 代打者の辛味だいこん大根切り 見事三振ゲームセットだ 


(みなと)
    親しくはなかったひとの追悼とつゆにわさびを多めに入れて

 「そうして、ご遺族の前で涙を流して見せ、ご香典の少なさを誤魔化そうとでも言うんですか?」
 「少し辛気臭くはないですか?」
 「でも、お清めの蕎麦は、お焼香が済んでからいただくものですよ。いくら涙を流してみても、もう、間に合いませんよ。」
     〔答〕 ついでにと、催涙弾をぶっ放しみんな泣かせる手もあるじゃない  鳥羽省三


(一夜)
    蕎麦つゆにたっぷりわさび溶かし入れ 痛い辛さを醍醐味と呼ぶ

 <一夜漬け>で覚えた知識をやたらにひけらかしてはいけない。
 「醍醐味」とは、「①醍醐の味、美味の最上のものとされ、仏の教法の形容とする。 ②素晴らしい味わいの食物。 ③ほんとうの面白さ。深い味わい。神髄。」と『松村明編・大辞林』は説く。
 序でに、同辞書の「醍醐」の項目を参照すると、「『仏』 五味の一。牛または羊の乳を精製した濃くて甘いとされる液汁。味の最高のものとされる。」とある。
 暇人であることをひけらかすみたいで申し訳ないが、自分自身の勉強の為、ぶ厚い辞書をひもといてみた。
     〔答〕 拠って知る、ヤクルトなどの乳酪の味をば指して醍醐味と言う  鳥羽省三


(お気楽堂)
    本わさび買うわけでなし鮫皮のわさびおろしを諦め切れず

 「鮫皮のわさびおろし」には、本来の用途以外に、次のような使い方もあるのでご注意を。
 「諦め切れず」に追っかけ廻すと、見事に嵌って、麻薬中毒になったりしますよ。
     〔答〕 鮫皮のわさびおろしで爪磨く女が誘う無間地獄よ  鳥羽省三


(本田鈴雨)
    ざる蕎麦のつゆにわさびを溶かす夏わびさびを知る少女となりき 

 「わさび」から発し、蕉風の「わびさび」に至るのは、さすがの<鈴雨>宗匠。
     〔答〕 炬燵(おこた)にて吟醸を酌む冬の夜に無理矢理飲まされ女となりぬ  鳥羽省三


(紫月雲)
    さびしいわさびしいわって言えるならいいのだろうか男性諸君

 何がさびしいのか、知ってるかい、諸君。
 月に群雲。花に雨。
 この世のことの全ては、決して、予定通りには運ばないのだ。
 だから、このさびしさは、己の全存在から来るさびしさなのだ。
 「実存」としてのさびしさ。
 いや、実存しないことに拠って生じるさびしさかも知れない。
     〔答〕 「悔しいわ!悔しいわ!」って云うだけで済むのだろうか?国民諸君


(キヨ)
    もう一度「ふにゃあ」って言わせるためだけにわさびを求めて長野に行くこと

 「ふにゃあ」とは、踏み甲斐の無い何かを踏んだ時に感じる感覚を表わす擬態語。
 そこで私も、その「踏み甲斐の無い」の「甲斐」に因んで、
     〔答〕 もう一度「キモイ」と言わせる目的で<ほうとう>食べに山梨に行く  鳥羽省三


(小林ちい)
    つんとしたところもいずれ癖になる わさびガールと呼んで頂戴

 「住めば都」、「惚れて通えば痘痕も笑窪」とも言う。
 ところで、同程度の価格の<チューブ入りわさび>でも、<S&B>のはあまり「つん」と来ない。
 嗅いで直ぐに「つん」と来るのは<ハウス>のチューブ入りわさび。
     〔答〕 つんとしたところはいずれ嫌になる<ハウスのわさびガール>使い捨て  鳥羽省三


(兵庫ユカ)
    切るとまだすこし凍っているちくわさびしいというよりはたのしい

 音数もぴたり。
 兵庫ユカ運動大成功。
 <ウルトラQ>の三回転全身捻りの超難度技ででピタリと着地。
      〔答〕 脱ぐと未だ私寒いわさびしいわ春まだ浅きペンション播磨  鳥羽省三


(空山くも太郎)
    わさびって題でもやっぱり君のこと詠もうとしているぐらい好きです

 それは、愛情に起因するものではなく、才能の枯渇に起因するものでしょう。
 どうせから、これくらい飛ばしてみたら。
     〔答〕 わさびって題でもやはり生姜のこと詠んでしまった生姜大好き  鳥羽省三


(鯨井五香)
    アボカドの種のくぼみをエスビーのわさびで埋めていいひとのふり

 「いいひとのふり」が効いている。
 更に言えば、同じ<わさび>でも、ハウスのよりエスビーのが<つん>と来ないから、その分だけ、彼への愛情が深いとも言える。
 でも、その程度の小細工で、「いいひとのふり」が出来るんですか?
     〔答〕 推して知る、アボガト刺身は連れ合いのオリジナルではないということ


(勺 禰子)
    とりわさは何故にとりわさびといはぬ行方不明の「び」を思ひ食む

 同工異曲とも思われる作品が数首ありましたが、それらの代表として選びました。
 <句割れ、句跨り>の技法が、一応、成功していると判断されたからである。
 短歌作法の常道の「五・七・五・七・七」に乗っ取って音読すれば、「「とりわさは・何故にとりわさ・びといはぬ・行方不明の・『び』を思ひ食む」となるが、意味を重視して句分けすれば、
    とりわさは
    何故にとりわさびといはぬ
    行方不明の「び」を思ひ食む
という、三行詩になる。
     〔答〕 蒲鉾にわさびを添えて<板わさ>と呼ぶことよりはいくらかましだ  鳥羽省三
         <板わさ>の場合は「び」が無く「板」も無い<板わさ>よりはかなり単純  同
         <板わさ>を食うとき我はふと悩む板が無いのに何故に板わさ?  同
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ありがとうございます。

怒涛のわさび評に圧倒されています。
そのなかにまじえてくださってありがとうございました。
鳥羽さんのすごいパワーを感じますが、その後、お加減、いかがですか?
寒い日が続きますが、ご自愛くださいませ。

ありがとうございます。

選歌ありがとうございます。

夏のある日、刺身醤油にわさびを溶かさないのが正しいのなら、蕎麦つゆに溶かすのは作法として正しいのか否か、などということをぼんやり考えながら、立ち喰いソバなんぞを食していた訳です。食通の方に一度お聞きしてみたいものです。


久哲さんの歌、相手がパーだから、ってことですね、わかります。

ありがとうございます

はじめまして。
僕の歌を取り上げていただいて、その上、返歌までいただいちゃって、ありがとうございます。
今、まさに、ゴール目前で走っている最中で、とても励みになります。

「わさび」は、とても苦労したお題でした。
近衛兵の頃というのは、僕はよく知らないのですが、
政治絡みで使われる「造反」という言葉は、
謀叛ほど、きっぱりしてないんですよね。
言葉にイデオロギーが染み込んでいるような、じわじわーっとくる感じ。
そのあたりが、僕の鼻にツーンときたという歌です。

では、あと7日。なんとかゴールを目指しますので、こそっと見守っててください。

芋類大好きですが何か?w

 私は宅配寿司の店でバイトをしていたことがりまして。そこで、わさびをこねこねしておったのです。
 安い粉っぽい薄い緑色のワサビありますよね。あれです。あれは粉末を水でねってあるのですよ。ホンモノのわさびではなくて、なんちゃってわさびです。つまり、ワサビダイコン。
 こねると刺激臭が立ち上るので、扇風機で送風しながらこねてました。そうしないと、まともに作業できないことになるのでw 
 ちなみに、パン屋はつぶれてますが、私がバイトしていた宅配寿司屋はまだ健在です。

わさび

 鳥羽省三さま
 いつも有り難うございます。私は、アバウトな性格ですが、食事
はできるだけ30品目食べることを目標にしています。鹿尾菜など
にシイタケ、人参、牛蒡、大根などいれて数日たべられるように常備したり、魚の南蛮漬けを常備しています。乾物などを使うとか、みそ汁の具をたくさんにするとか、素麺の薬味なども少し意識すれば案外とれるものです。鳥羽さまは、ウォーキングに励んでいらっしゃるんですね。私は、紫外線が天敵なので、デパートめぐりなどで運動不足を解消しています。最近測ったら、骨密度があがり貧血がなおっていましたが、食べ物のせいでしょうか。2年前からパワーヘルス
という健康器具を毎日つかっているからでしょうか。

鳥羽さま、素敵な返歌も有り難うございます。思わず笑ってしまいました。鳥羽さまのご健闘をお祈りいたします。
寒くなりましたので、お元気でお過ごしくださいませ。

選歌、および返歌ありがとうごさいました

体調のいい夜許され<チョウヤ梅酒>コツプ一杯飲むのが楽しみ  鳥羽省三

チョウヤ梅酒はわさびあじ柿の種によく合います。
わさびの味わいは、まさに日本のあじわいですね。初めて食べた外国人が鼻を真っ赤にして苦しんでいました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

沢蟹の生食はダメですよ

省三様。
毎度ありがとうございます。
久哲でございます。

くくく、省三様はマイベスト歌は華麗にスルーするのに
こんな歌は拾っていただけるとは、ありがとうございます。

この歌は、一首の時限爆弾でして・・・
破裂した時に、壮大な謎が解けるかも知れません。
しかし、湿気てますね。だめだこりゃ。

そうそう、asita さんでいいのかしら?
>相手がパーだから
それじゃあ、某有名歌人様のお歌そのまんまじゃないっすか!
確かにそう考えると、面白いけど・・・
詠んだ時は露ほども考えていませんでした。ホントだよ。
(むしろ何も考えていなかったり)

あらためて見るとこの歌面白いね(自作だろ!)
いやー 勉強になった。ありがとうございます。

朝早くドライスーツを買いに来たお相撲さんはどこに潜るの 久哲

鳥羽さん有賀藤。

呼ばれて飛び出てしゅだだだん。珠弾参上。


舞台は日本シリーズ。

7回を投げ終えて無失点投球の先発佐藤(俊夫)。
8回も簡単にツー・アウトを取ったものの二者連続四球で二死一、二塁。一打逆転のピンチ!

この試合の佐藤投手、四死球は与えるが被安打はゼロというピッチング。
あとアウト4つでプロ入り初のノーヒット・ノーランを達成しようかという場面。

越知哀監督がマウンドに行く。笑みを浮かべながら佐藤の肩をポンポンと。
「ピッチャー、サトウトシオに代わりましてワサビ。背番号 11 」

わさびで食い止める。

そして守護神へバトン。

こんばんは。その3

磯野カヅオです。
コメント、ありがとうございます。

"ヒンドゥ"と言うと、"ヒンズー教"あるいは"ヒンドゥ語"などを指すことになると思うのですが、ここでは"インド"の意味で用いました。この歌を詠んだ時、インドに行ってきたのです(本当)。

"ヒンドゥの酷暑"はそのまま、インド滞在時の暑さのこと。そしてインドで冷たいそばを食べたのです、わさびを効かせまして。つまり、結構そのままの意味の歌なのです。
「わさび」は普通に詠むと難しかったかもしれないのですが、うまく消化できてよかったと思います。

それでは、失礼いたします。

知らなかった!

返歌ありがとうございます。
わさびおろしで爪磨きですかっ!およよ。
結構なお値段のものですから、さすがに考えも及びませんでしたが、教えられると試してみたくなる、かも……^^;

ありがとうございます。

こんにちは。キヨです。
選んでいただき、ありがとうございました!

わさび大好きなのでみなさんの歌を詠みながら心はすでに近所のすし屋(回る方)です。

「甲斐」にかけての返歌もありがとうございます。ほうとうも食べたくなってきました(笑

こんにちは。

 いろんなところで拝見していた「見沼田圃の畔から」のお便りをわたしも受け取れる日が来るなんて、うれしいです。
 コメント欄のにぎやかさもわくわくしますね。

 いためるはぜんぶかかってますよー。
 失恋するとからいからい料理をしたくなります。
 食材を君を切りながら、炒めて傷めて悼めるわけです。
 あ、ちゃんとぜんぶ食べますよ。ふふ。

選歌ありがとうございます!

選歌いただきありがとうございます。

>ハウスのよりエスビーのが<つん>と来ないから、

これは、知りませんでした(笑)

>その分だけ、彼への愛情が深いとも言える。

そして自分では想定していなかった登場人物が現れて、
とても興味深かったです。


わたしもアボカドにわさび醤油大好きなんですけど
これが「連れ合い」の発明だったら
よくぞこんなに美味しいものを見つけてくれた!と
惚れ直すところだけど・・・オリジナルでは、ないのですよね。

初めまして。

この度は私の拙い短歌を批評して頂きありがとうございます。
一夜漬けで詠ったのバレてしまいましたね。^^;
さすが鳥羽さんです!誤魔化し効きませんね。

でもわさびって、なんであんなに鼻にツーンときて辛いのに
又食べたくなって又ツーンってなって、でも又食べて…
あの醍醐味を味わってしまったら、逃れられませんよね。
そんな醍醐味をこれからも詠ってみたいと思います。

これからも批評を楽しみに読みにきますので、
お身体をご自愛しつつ頑張ってくださいね。

ありがとうございました

選歌していただき、ありがとうございました。
(お礼が遅れて申し訳ありません!)

>私が密かにライバル視している
ものすごく、恐縮です。
しかしそう言っていただけると、よし、がんばらないと!と
ぎゅっと身の引き締まる思いでおります。
どうもありがとうございます。

このように多くの作品の歌評を書き、さらに返歌を詠むというのは、
大変なエネルギーと時間を必要とすると思います。
それを継続させている鳥羽さんに感服しています。
これからも楽しみに拝読させていただきます。
ありがとうございました。
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鳥羽省三

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