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一首を切り裂く(030:牛)

(春待)
   蛞蝓に塩撒きながらホームレス蝸牛に見え止まる指先

 落ち目の朝日新聞のなりふり構わぬ商策によって、ホームレス歌人・公田耕一さんの名が全国的に知れ渡ってからというもの、敏感な私の身体は、「ホームレス」という言葉にアレルギー反応を示すようになった。
 そこで、お題「牛」を詠んだ百首余りの投稿歌を閲していて本作に出会った時、一瞬ギクリとし、体中に鳥肌が立ってしまった。
 でも、驚くに価しない。本作に登場するホームレス氏は人間に非ざる蛞蝓のこと。事の次第は以下の通りである。
 「蛞蝓退治には塩を撒くのがいちばん」と、何方かから承った作中の<わたし>が、蛞蝓の姿態も碌々知らないままに、自宅の庭の彼方此方に塩撒きをしていたら、突然、当面の仇敵の蛞蝓に出くわしてしまった。
 そこで彼は、「あっ、これは甲羅を持たない蝸牛だ。ホームレスの蝸牛だ。この蝸牛は、あの公田耕一さんと同じ身の上なのだ」と勘違いし、一瞬、塩撒く指を休めてしまった、というだけの話である。
 退治しなければならない蛞蝓を見て、甲羅を失った蝸牛と誤解したのは、作中の<わたし>の愚かなところではあるが、それを「ホームレス蝸牛」と言い換えて一首をものしたのは、その失点を挽回する手柄である。
 拠って、その差引勘定はプラマイ零。作品の出来もそれと同じで、所詮、冗談短歌の域を出ない。
    〔答〕 蜘蛛見たらホームレスヤドカリと言うのかな。宿が無いからヤドカリなのに。 


(jonny)
   友達の友達は牛 友達の友達は豚 ねえなに食べる?

 らしくも無く、恋人と一緒に<jonny>さんご用達の吉野家に行った時の、作中の<わたし>とその恋人との会話。
 「(僕には、北海道と鹿児島に、それぞれ一人ずつ友達が居るんだけどー。その友達は二人とも変なヤツでねー、僕以外の人間とは付き合いが無いんだー。そんでー、北海道に居る)友達の友達は(人間でなくて)牛。(鹿児島に居る)友達の友達は(これも人間でなくて)豚。(ところで、)ねえ、(僕たちは)なに食べる?」
 「私は牛丼にするけどー。あなたは豚丼にしたら。もちろん、特盛りでねー。あなたの友達の友達を食べるみたいで悪いけどー。」
    〔答〕 もしかして<jonny>のあだ名が牛と豚 友達の友達は<jonny>のことだ


(ひいらぎ)
   牛丼を食べる横顔盗み見て友達以上になれる日を待つ

 <ひいらぎ短歌ワールド>とは、「結婚願望症候群に陥った女性の世界」の別名。もっと端的に言うと、「処女喪失願望症候群に陥った女性の世界」の別名である。
 故に、本作中の<わたし>は、「(吉野家で)牛丼を食べる(彼の)横顔(を、真向かいの松屋から)盗み見て(いても)、」「(帯広駅前の食堂で豚丼を食べる彼の姿を、自宅で想像していても、自分と彼とが)友達以上(の関係)になれる日を待つ」気分になってしまうのである。
    〔答〕 友達以上恋人以下の狭間には肌着一枚入る余地無し 


(音波)
   「牛さんって、心臓四つあんねんて!」・・・うん、それは胃のことじゃないかな?

 作中の<わたし>は、科学的知識に欠けた子供を持っているわりにはのんびりした性格であり、まるで牛みたいである。
 悠々と達観の境地を往く人・音波さんの傑作である。
    〔答〕 「父さんって、心臓四つあるのかな?」「馬鹿だね、それでは牛みたいだよ」


(原田 町)
   認識票ゆらしつつ牛は黙々と餌を食べおり食わるる日まで

 昨今は、猫も杓子も首から認識票をぶら下げている。
 そういうことで、先日、日本橋の某デパートで行われた「大北海道フェアー」に行って買った、木製の手作り杓子にも、「幸福を盛る杓子。札幌市手稲区前田1条8丁目8-88 電話:011-888-8888(代)・森田健作謹製」と、墨痕鮮やかな認識票がぶら下げられていた。
 さて、豚ウィルスが大暴れをしている今日だが、本作に登場する豚くんならぬ牛くんも、体毛に繋ぎ止められた「認識票(を)ゆらしつつ」「黙々と餌を食べ」ている。
 しかし、この牛くんが、そうしていられるのは、暴れる牛より獰猛な人間に「食わるる日まで」のことであり、束の間のことでしかない。
 それにしても、気になるのは、私が日本橋の某デパートで買った木製手作り杓子の製作者名の<森田健作>。
 森田健作さんお手製の杓子で、私は手前味噌でも盛ろうか。
 ところで、些細なことではあるが、一首全体として、口語・現代仮名遣い表記の本作に於いて、五句目を、「食われる日まで」としないで、「食わるる日まで 」としたのは何故だろうか。「食わるる」の「るる」は、文語の受身の助動詞「る」の連体形であるから、それを、口語動詞の「食う」の未然形「食わ」に接続させることは出来ない。ここは素直に、口語の受身の助動詞「れる」の連体形「れる」を用いるべきである。
 そうすると、本作は、「認識票ゆらしつつ牛は黙々と餌を食べおり食われる日まで」という、現代仮名遣いに統一された口語作品となる。
 観賞に価する作品が払底気味の今回、本作は投稿作品中の一、ニを争うような傑作であっただけに、こうした初歩的なミスはあまりにも惜しまれる。 
.    〔答〕 「食われる」が口語表現。「食わるる」は口語文語のチャンポン表現。 


(都季)
   知っていた、でも騙されていたかった いちご牛乳みたいな嘘で

 よくは知らないが、この作品の表現から推すと、市販の「いちご牛乳」には、イチゴの香りのする添加剤が入っているだけで、本物のイチゴは入っていないのではなかろうか。
 作中の<わたし>は、そのことを知らなかった頃は「いちご牛乳」が大好きで飲んでいたが、その秘密を知ってからは、イチゴ牛乳を飲まなくなってしまった。
 だから、誰かが「嘘」をつき、それが嘘だと発覚した時、彼女は「(あなたの言葉が嘘だと、私はずっと前から)知っていた、でも(出来ることなら)騙されていたかった。(あなたのついた嘘は)いちご牛乳みたいな嘘で」と感じたのである。
 初句「知っていた」の後に読点「、」を付したならば、ニ、三句「でも騙されていたかった」の後、及び四、語句目「いちご牛乳みたいな嘘で」の後に、句点「。」を付さなければならないはず。
 そもそも、短歌は、五句三十一音の一行詩であるから、本来的には、そういうものは入らないはず。
 どっちつかずの表記をしていてはいけない。
    〔答〕 知っていた でも騙されていたかった いちご牛乳みたいな嘘に
        大福には入っているけど牛乳には入っていないホントのイチゴ
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食わるる

鳥羽様
食わるるについて、文語口語のチャンポンというご指摘、もっともと思いますが、旧仮名で「食はるる」とした場合はどうでしょうか。それより、食べおりのほうがチャンポンでした。食べるの口語に文語のおりを付けてしまいました。

No title

原田町 様

 早速、ご覧賜り篤く御礼申し上げます。
 御作「認識票ゆらしつつ牛は黙々と餌を食べおり食わるる日まで」の件ですが、観賞記事での、無用とも思われる私の一言は、<古典仮名遣ひ>と<現代仮名遣い>のチャンポン現象を解消して、この作品を、「認識票ゆらしつつ牛は黙々と餌を食べおり食われる日まで」という口語作品にすることを勧めようとしたものでした、したがって、「食べおり」という言い方はチャンポン表現ではありません。
 御作を、私は、お題「牛」をお詠みになられた作品中の白眉として拝見致しました。
  つきましては、文法的な不備などを解消するため、「認識票揺りつつ牛は黙々と餌を食みをり食はるる日まで」 としたらいかがでしょうか。
 あなた様の仰る通り、「認識票ゆらしつつ牛は黙々と餌を食べをり食はるる日まで」とした場合、<古典仮名遣ひ>と<現代仮名遣い>のチャンポン現象は解消されますが、二句目「ゆらしつつ牛は」の字余りが惜しまれます。
 私の改作案はそうした難点を解消しょうとしたものです。
 「食べ」を「食み」としたのは、そうした方が牛の動作らしくなるから。「ゆらし」を「揺り」にしたのは、字余りを解消するためです。
 「ゆらす」は、五段活用の口語動詞であると同時に、四段活用の文語動詞でもありますから、「ゆらしつつ」という言い方でも、文法的には何ら間違いでは無いのですが、それでは、二句目が字余りになるので、「揺りつつ」としたのです。

仮名遣い

鳥羽様
 私のぶしつけな質問に丁寧なご解答をいただきありがとうございます。題詠はまだ半分以上残っておりますが、これからは旧仮名で作ってゆこうと考えています。文法上の間違いをしそうで、不安ですが。

こんばんは。
この度は私の歌を取り上げて頂きありがとうございます。
鳥羽省三さんのおっしゃるとおり、一カ所だけ句読点っておかしいな…と投稿した後に気付きました。
句読点を使う表現はきちんと効果を考えた上で使うべきだなぁと勉強になりました;
ご指摘ありがとうございます、取り上げて頂けて嬉しいです♪
では、また拝見させて頂きますね。

ありがとうございます。

この歌はちょっと粗い作り方だったかなと反省している歌です。
正直、ちょっと「牛」は作りにくかったものですから。。。
先に進みたいがために、逃げてしまうというのは
できるだけしたくはないのですが、たまにやってしまいます。

鳥羽さま

いつもありがとうございます(^o^)

ひいらぎ短歌は、別名、妄想短歌なのです。
題詠Blogに関しては…。
そういうのもありかな、と。
これからもどんどん妄想しますよ!

蝸牛並みのコメントですみません。

のそのそと見ておるだけより歌い出し蝸牛の歌漸くに終ゆ

 こんばんは。鳥羽様。カメよりも遅い返信ですみません。
私のblogにもご案内コメントをいただいていたのに気づいて、取る物も取り敢えずやってまいりました。
  以前鳥羽様から「くちばし」疑惑(?!)の記事をいただいてから反省をしまして短歌投稿のスタイルを題詠blogについて見直すことにしました。
 何も見ずに作った歌でも酷似している歌があることもありました。
まず皆様のTB投稿歌をざっと目を通させていただいてから、歌を詠み投稿するということにしました。
 これが私の中での大きな変化になりました。そうやって出来た一首がこれでした。
 今回の「牛」も頭に浮かんだ「蝸牛」という漢字と「蛞蝓」(家を失くした蝸牛)という無茶歌ではありますが、お目に留まったのがまず嬉しいのです。
 しかしさすがに無茶過ぎたところが見透かされておりまして、汗も流しております。

>蜘蛛見たらホームレスヤドカリと言うのかな。宿が無いからヤドカリなのに。 

・・・ザリガニを見たら言ってしまうかもしれません。
楽しい返歌をありがとうございます。
では、失礼します。
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