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一首を切り裂く(029:くしゃくしゃ)

(西中眞二郎)
   名人はくしゃくしゃ頭を掻きむしり碁盤の上に身を乗り出しぬ

 「名人」というからには棋士のこと。
 歴代の将棋名人で「くしゃくしゃ頭」の人物といったら、あの鬼才・升田幸三名人を指すのであろうか。
 本作の作者・西中眞二郎氏や私ぐらいの年齢の者なら知っているが、あの升田幸三氏は、「くしゃくしゃ頭」を盤上に突き出し、「身を乗り出し」て将棋を指していた。
 私は、前稿に引き続いて本稿でもまた、西中眞二郎さんの作品を鑑賞することによって、歌人・西中眞二郎氏の人となりを知り、私とは、人間の出来が違う西中氏もまた、木村・大山・升田の三名人が盤上に身を乗り出して覇権を争っていた時代の子であり、「透明人間」になることが出来たら、「あれもこれもしたいやりたい」と思っている人間であることを知った。
 短歌を詠み読み、「題詠2009」といった騒々しい世界に身を投じることの効能の一つは、こうして、自分とは異なる人のお人柄に接することにも在るのではないだろうか。
    〔答〕 くしゃくしゃの頭時折り掻き揚げて長考に入る升田名人


(jonny)
   くしゃくしゃに今日をまるめてポケットに突っ込んだのは君だけじゃない

 本作中の「君」とは、まさしく、私・鳥羽省三を指すのであろう。
 私の汚れた衣類を洗濯機に入れて洗った後、私の家内は決まったようにこう言う。
 「また、ズボンのポケットの中にティッシュペーパーを入れたままにして、洗濯機に放り込んだでしょう。お蔭で私の下着までティッシュペーパー塗れになってしまって、洗い直さなければならない。今度から注意してね」と。
 そうした時、私は言う。
 「私の愛する妻よ、私のズボンのポケットに入っていたのは、渋谷駅前で貰った武富士のティッシュペーパーなどではなく、くしゃくしゃにまるめた、今日という日の人生そのものなのだ。」と。
    〔答〕 魔羅拭いてくしゃくしゃにして棄てた紙 明け方見れば薔薇のごと咲く


(水口涼子)
   〇点の答案用紙くしゃくしゃに丸めて捨てた経験はない

 本作の作者・水口涼子とほぼイコールの関係にあると思われる、作中の<わたし>は、これまでの人生のいろいろな場面で受けた試験で、「〇点」を取ったことが無いのであろうか?
 それとも、「〇点」を取ったのは再々であり、彼女の小・中学時のあだ名は<〇点パー子>であったが、その「〇点の答案用紙をくしゃくしゃに丸めて捨て」ることもせず、後生大事に家に持って帰ってお母さんに見せ、今もまだ、フエルアレバムに貼って取ってあるのだろうか?
 一読者としては、そこのところが知りたい。
    〔答〕 〇点の答案用紙を捨てもせずコクヨのファイルに保存している 
 因みに言うが、私はペーパーテストの達人で、これまでに受けた試験の九割以上は満点であった。試験開始後、十分も経たないうちにさらさらと答を書き、得点欄に「100点」と書いて、教室を出て行く私のパホーマンスは、それぞれの学校の名物であり、私のそうした遣り方は、無能な教師たちの憎しみを買い、私はしばしば彼らから殴打された。


(チッピッピ)
   くしゃくしゃな気分で歩くオケラ道 後ろ姿はみんな似ている

 中山競馬場の.南門を出て西船橋駅に向かうルート、通称<オケラ街道>を、私はいったい幾度、ポケットの中で外れ馬券をくしゃくしゃに握り締めながらとぼとぼと歩いたことだろうか。
 去年の暮れの有馬記念の日の日暮れ時もそうだったし、今年の四月十九日の皐月賞レースの日の午後もそうだった。
 夕暮れのオケラ街道を長く影を引いて歩く後ろ姿は侘しく、それは、私のであれ、<チッピッピ>さんのであれ、似たようなものである。
    〔答〕 生涯の願いの一つ 夕暮れのオケラ街道笑顔で歩む


(五十嵐きよみ)
   くしゃくしゃにしたりされたりした後に互いの姿を見て笑い合う

 「くしゃくしゃにしたりされたりした後」とは、男と女の濡れ場の後のことであろうか?
 それとも、いい年をした女性同士がコチョコチョとくすぐりごっこなどをした後のことであろうか?
 五十嵐きよみファンの一人としては、そこの辺りのご事情をお伺いしたい。
    〔答〕 くしゃくしゃにしつつされつつ泣き笑い組んで解れてほぐれて組んで  


(流水)
   新聞をくしゃくしゃにして読む癖をもう叱られぬ暮らしが続く

 悪癖が咎められるのも、咎めてくれる家族が居ればこそのこと。その家族に去られた今は、かえって悪癖を発揮する気にもならない。
    〔答〕 新聞をくしゃくしゃにして読む癖を咎める妻が居ればよかった


(虫武一俊)
   細切れの履歴書よりもくしゃくしゃにされた心の代わりがなくて

 百年に一度の大不況の真っ只中に立たされた今日、なけなしの一万九千八百円を叩いて、紳士服の青山で買ったスーツを着込んで臨んだ就職試験の結果を知らせる封書が届いた。
 不合格の通知と一緒に返却された履歴書は、腹立ち紛れにその場で細切れ状態に切り裂いてしまった。
 その履歴書の代わりは、105円ストアーに行けば買えるが、不合格通知によって「くしゃくしゃにされた心の代わりはなくて」泣くに泣けない。
    〔答〕 くしゃくしゃにされた心は治っても受ける会社がもう既に無い


(久哲)
   いかなごの釘煮の中にちらほらと見覚えのある顔がくしゃくしゃ

 「いかなごの釘煮」は、佃煮の一種で、瀬戸内海東部沿岸部(播磨灘・大阪湾)の郷土料理として知られている。
 その名称の由来としては、その形状や色合いが<錆び釘>に似ていることから名付けられた、という説が有力である。.
 私は、関西の人間ではないから、「いかなごの釘煮」を見たことは無いが、シラスなどに小海老や小蟹や小蛸などがなどが雑じっていることがあるが、本作、「いかなごの釘煮の中にちらほらと見覚えのある顔がくしゃくしゃ」とは、その<いかなご版>なのであろう。
    〔答〕 年若く素直な歌を詠む中に交じりて久哲ひねた歌詠む
 

(暮夜 宴)
   くしゃくしゃな夜に包まりすきまからひしゃげた月をぼんやり見てる

 「くしゃくしゃな夜に包まり」とは、「失恋したり、リストラの憂き目に遇ったりして、不幸のどん底に在る者が、夜の静寂に包まれて、その不幸を噛み締めている状態」を指して言うのであろう。
 その者が、そっと眼を開けて夜空を仰ぎ、「ひしゃげた」形の「月をぼんやり見てる」のである。
 「月」が「ひしゃげ」て見えたり、「夜」が「くしゃくしゃ」に思われたりするのは、そこに、自分の<ひしゃげて、くしゃくしゃな>心理が投入されているからであろう。
 本作の作者・暮夜宴さんは、本作の表現を通して、百年に一度と言われる不況下に生きる、庶民たちの逼塞した生活と、その哀感を述べようとしているのである。
    〔答〕 くしゃくしゃな夜に包まれ暮夜さんはひしゃげた顔で歌を詠んでる 
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ありがとうございます

中山競馬場には、2度ほどしか行ったことがないのですが
その時の<オケラ街道>の印象が強烈だったので
こんな歌を詠んでみました。
ところで、どうせ「生涯の願いの一つ」にするなら
中山競馬場の門にリムジンを呼びつけ、
オケラ街道なんか通らずに銀座へ直行!
っていうのはどうでしょうか?(笑)

いかなご

省三様。
ありがとうございます。

私としたことが
「短歌で人名や名詞を使う場合はぁ、発表する場とそれ以上に
一般的常識かどうか常に認識しないとぉ」

等と言う場合が多いですが・・・

「釘煮」って、全国区じゃないやん!
関西ですら、大阪の方のスパーに並ぶようになったのは
ここ4~5年ですから。

いかん、いかん。
でも、おいしいですよ。
あの粗雑な味付けと、ぐちゃぐちゃ加減。

とにかく、「釘煮」の解説付きで助かりました。
それでは、次は凸凹でした。

ありがとうございます。

いろんな一日がありますよね。
この歌は結構自分では気に入っているので
採り上げていただいて嬉しかったです。

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Re: 暑中お見舞い申し上げます

> お元気でいらっしゃいますか?
> しばらくコメントがなく寂しいと思っておりました。
> こちらの歌には謎説きをすべきか迷ってそのままになってしまい失礼いたしました。(〇点はとったことありませんよ、笑い)
> むしろこのお題では、100点をとっても母は無関心だったというような投稿が私はとても気になりました。
>
> 私も義母の入院、手術と、また長期化と少し余裕がなくお休みさせて頂いておりました。
> いい短歌?大御所?の投稿があまりなく(みなさん、おそれをなして?)コメントの書き様がないかもしれませんが、楽しみにしている者(私を含め)大勢いらっしゃるので、またの再開を楽しみにしております。
>
> 私も推敲不足はともかく、感情のままに完走する決意をしましたので、今後ともお目汚しをお許し下さいませ。
>
> では
> ご自愛を・・・

水口涼子 様
皆      様
 残暑お見舞い申し上げます。
 さまざまなる御心配り真に有難く篤く御礼申し上げます。
 私は、今春・大型連休明け頃から、病気入院や転居などさまざまな身辺事情に因って、「一首を切り裂く」の更新を中断しておりましたが、お蔭様にて、最近、健康が幾分か回復するなど、更新継続を阻んでいた事情が好転しましたので、更新を再開致したいと考え、ただいま、鋭意準備中でございます。
 つきましては、水口様はじめ皆様方のご愛読を賜りたく、何卒、宜しくお願い申し上げます。
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