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一首を切り裂く(015:型)

(ふみまろ)
   冬型の気圧配置はもういやだ一抜け二抜け三寒四温

 「冬型の気圧配置」と言えばあのお馴染みの西高東低型。
 と言ってもこれには、<日本海の等圧線が南北に縦縞模様に走る>「山雪型」と、<日本海の等圧線が袋状に湾曲する>「里雪型」との二種類あるそうだ。そして、「山雪型」の時は<風が強く>、「里雪型」の時は<寒気が強い>とも言う。
 どちらの型にしろ、この「冬型の気圧配置」はいやだ。
 そこで評者は、「一抜け二抜け」して八年間に亘る雪国暮らしから抜け出して、一度は捨てたはずの首都圏にUターンしたが、それでも、世間の強い風当たりからは逃れられない。
 でも、ここしばらくの「三寒四温」の時季を過ごすと、やがて本格的な春。来週早々千鳥が淵の桜も咲くそうだ。
 もう少しの辛抱だ。今日も切り裂きジャックに専念しよう。
 それにしても、<ふみまろ>さんはグット・タイミングな季節便りを下さった。
    〔答〕 <しまむら>のボアのコートは着飽きたり三寒四温南高北低 


(木村比呂)
   慈雨あさく冬を溶かして今朝がたの梅田はとても静かだったね

 「梅田」とは、大阪駅のある、あの梅田のことでしょう。
 昨今、何かと話題になるのは大阪経済界の冷え込みですが、久方ぶりの「慈雨」は、季節としての「冬」ばかりでは無く、景気の「冬」も「溶かして」くれるかも知れません、とは、私の儚い願望です。
 大阪造幣局の<通り抜け>の桜の開花はいつ頃になるのでしょうか。その時季になったらさくらメールを下さい。昨秋から長男が大阪に単身赴任をしているから、必ずお訪ねします。
    〔答〕 <通り抜け>の桜メールはまだ来ない お札どんどん増刷したら?
  

(梅田啓子)
   鎖(とざ)したるこころ放ちて生きゆかな魚(うを)の模型が宙を泳げる

 こちらの梅田さんは、いかがですか。
 「今朝がた」はいつものように「とても静か」でしたか?
 まさか、「鳥羽の野郎、私の作品にケチをつけゃがって。ぶっ殺してやるから」などと、大荒れに荒れていらっしゃるのではないでしょうね。
 もし、そうだとしたら、「鎖(とざ)したるこころ放ちて生きゆかな」という、自戒の言葉をよくよく噛み締めることです。
 閑話休題。
 「魚の模型」とは、鯉幟のことでしょうか。
 もし、そうならば、これは凄いことを仰る。おそらくは歌壇最初の試み。言わば<ほんぽうしょえん>でしょう。
 あっ、今、<本邦初演>と書くつもりで、<ほんぽうしょえん>と入力したら、<奔放初演>と変換されてしまった。これは大変だ。
 <奔放初演>では、あの有名な<梅田ローズ劇場>になってしまう。
 いくらなんでも、そこまで言われたら、こちらの梅田さんだって、荒れまくるのは当たり前だよね。
    〔答〕 リビングの柱の傷はおととしの春一番の名残りなりけり


(西中眞二郎)
   型通りの答に二の矢飛ばぬまま国会質疑次に進みぬ

 「西松建設問題」を抱えていたのでは、うかつに「二の矢」も飛ばせない。
 「型通りの答」とは、<予め予想された答>ということでありましょうが、その<答>や<型>は、霞ヶ関方面の頭脳明晰な方々がお作りになられたものでありましょう。
 そう言えば、作者の西中眞二郎さんもまた、かつてはそちら方面のお方であられたとか。そうした前歴を持たれる西中さんには、その「型通りの答」の成立過程や大臣の国会答弁への官僚の関わり方などが、手に取るように解るのでありましょう。
 それだけに、一首全体に現実感が感じられる。
 そう言えば、その昔、「三矢研究問題」というのがありましたね。あれと、昨年の「田母神論文問題」とは同根でしょうか?
    〔答〕 二の矢飛び三の矢飛んでも恐くない鏑矢返しで党首ひやひや 


(はしぼそガラス)
   本日も型どおりに訊く「如何ですか」「変わりないです」朝の回診

 今は亡き、田宮二郎主演の、学部長教授の朝の回診風景が思い出される。
 口を大きく開けてしまったら病室の澱んだ空気を吸ってしまって身体に毒だ、と言わんばっかりに、口数少なく「如何ですか」とだけしか言わない。
 あれで診療点数は何点なんでしょうか?
    〔答〕 型どおり「如何ですか」と訊ねれば今日の主治医のお役放免  


(ほたる)
   型落ちの液晶テレビが映し出す巻き戻せない過去の残像

 昨今流行の超薄型液晶大型画面も、型落ちともなれば三割引、五割引は当り前ののお買い得価格となる。
 評者の家でも昨春、シャープご自慢の<亀山モデル>の最新型を型落ち前に買ったが、その五十二吋も、今では雪国の空き家で冬眠中。
 そろそろスギ花粉の季節だから、超立体のドクター型マスクを掛けてやる手配をしなければなるまい。
    〔答〕 型落ちの液晶画面で見てみたら党代表が岡田になってた
        型落ちの液晶テレビに映ってた<さむらいジャパン>は<落ち武者ジャパン>
 以上二首は予想記事です。


(ひぐらしひなつ)
   刈りたてのあたまを寄せて春の日の人体模型に脾臓をさがす

 三月も残すところ十日余り。もう直ぐ入学式の季節です。
 作中の「刈りたてのあたま」とは、中学か高校の新入生男子のそれでしょう。
 その「刈りたてのあたま」をした一年坊主が、入学カウンセリング行事の一環としての校内見学中。すると、生物教室で彼らを迎えるのは、身体全体に血管を張り巡らし、五臓六腑が取り外し自由となっている人体模型である。そこで、一年坊主の一人が「刈り立てのあたまを寄せて」「脾臓をさがす」
 好奇心は発明の母であり、発見の父である。
    〔答〕 すけすけの頭蓋を寄せてダイソーで鳥羽と刻んだハンコ探せり


(ぷよよん)
   型紙でぬいてた恋も卒業ねフリーハンドもわるくないかも

 入学したと思ったら直ぐ卒業。「一首を切り裂く」の歳時記の展開は超高速である。
 今どき、OLや大学生にもなって、「これからはフリーハンドの恋をしよう」などと言う晩熟(おくて)の女性も居ないだろうから、「型紙でぬいてた恋」とは、中学生か高校生ぐらいの年代の恋を指して言うのであろう。
 学校の授業中に目配せをする。部活中の彼をグランドの片隅で見守る。恐る恐るアドレスを聞いてメールする。テスト明けの土曜日にお手々つないでDLに行く。せいぜいその程度の恋なのだ。
 そのような恋を卒業して、これからは「フリーハンド」の恋をしたいと思っているのだが、それは、作者<ぷぷよん>さんの分身と思われる、作中の<わたし>の勝手な願望に過ぎない。
 昨今の男性は目が肥えているから、いたずらに<ぷぷよん>とした女性などには目も呉れないかも知れない。
 さて、この恋愛願望の結末は如何に。
    〔答〕 型抜きの恋もいろいろあったりし肩脱ぎひも解き裾脱ぐもある


(髭彦)
   絶え間なき型(モデル)チェンジの誘惑に浪費強ひらる吾ら愚かに

 世界不況が原因の営業不振から、ホンダやトヨタがFⅠラリーから撤退するというニュースを、好感を持って聞いた自動車ファンも少数ながら居たと言う。
 これからの自動車会社の製品開発の方針が、今までのようなスピード重視、デザイン重視といった方向から、エコ重視、安全面重視といった方向に変わって行くだろうと予測されるからである。
 ことほど然様に、スピードとデザインを追求するあまり、飽くなくモデルチェンジを繰り返していた自動車会社の製品開発方針は、心ある自動車ファンや世間の人々の胸を痛ましめていたのである。
 この一首は、案外、作者・髭彦さんの自戒の弁ではないだろうか。
 高校の教壇に立ち、顎鬚など蓄えて、がちがちの正統派の短歌を詠む髭彦さんが、一皮剥けば自動車レースに狂奔し、内外の自動車会社がニューモデルを発表する度ごとに、それに飛びつくカーキチであったとすれば、それはそれで面白い。
 「絶え間なき型(モデル)チェンジ」を繰り返すのは、何も自動車会社に限らず、電器会社でも服飾会社でも同じことである。だから、私たち消費者は、この髭彦の命の叫びに耳を傾けるべきである。
    〔答〕 絶え間なき浪費狂ひのその果に歌など詠みて髭彦あはれ


(振戸りく)
   砂浜を固めてとった右足の鋳型に海がそそがれている

 手作りの革靴を作っている靴屋さんが、お客さんをわざわざ砂浜まで連れて来て靴の足型を取ったわけでも、足型専門の彫刻家が砂浜に遠征したわけでもなさそうだ。
 恋人か誰かが砂浜に記した右足の足型に潮が満ちて来たというだけのことであろう。
 「右足の鋳型に海がそそがれている」という、五七七が瀟洒であり、なかなかの佳作ではあるが、「固めてとった」という二句目の表現に疑義あり。
 「鋳型に」としたからといって、「固めてとった」とする説明する必要はさらさらに無いと思われる。
    〔答〕 砂浜に彼が記した右足の鋳型に海がそそがれている


(伊藤真也)
   その笑顔 おととい買った型落ちのデジタルカメラで切り取ってもいい?

 それほど豊かとも美男美女とも思われない、彼と彼女の恋愛絵巻が活写されていて好ましい。
    〔答〕 おとといの型落ちカメラもカメラだが彼と彼女も少し型落ち


(みずき)
   髪型をそくそく変へて逝く夏の鼓動を君に重ね聴きゐし

 「そくそく」にかなり疑義あり。
 この「そくそく」は「変えて」の連用修飾語として置かれているのであろうが、作者は、これにどのような意味を託したのであろうか?
 評者は用例主義者ではないが、このような破格の使い方には接したこともないし、本作での使用法も適切ではないと思う。
 また、「鼓動を君に重ね聴きゐし」という四、五句の表現にも疑義を感じる。一首全体、推敲の余地あり。
    〔答〕 髪型を変えて死に行く夏の日の君の鼓動に耳を澄ませり


(蓮野 唯)
   煮るだけで型にハメてはいけませんとろ火で見守る子育ての妙

 お題しり取り、辛うじて成立。
 でも、私のように頭脳明晰でない者がこの一首を読んだら、「本作の作者は、子供を煮て食べる鬼婆か?」などと誤解しますよ。
 子供の肉を暖炉のとろ火でじっくりと煮て、とろとろになったのを「型にハメ」るとしたら、これはまさしく鬼婆の所業ですよ。
 「短歌は中学生が読んでも解るように作りなさい」とは、今は亡き植松寿樹先生が、私の師・森田悌治先生(故人・群緑の選者)に、よく言われていたお言葉だったそうです。
 「子育ての妙」と自慢するのも如何か?
    〔答〕 とろとろに煮てから型に入れるだけ寒天料理はお茶の子さいさい  


(マトイテイ)
   君形の鋳型に嵌めた僕だから応用力が少し足りない

 初句「君形の」は「きみけいの」と読めとの意図なのだろうか?
 「鋳型」の「型」との重複を避けての措置とも、単なるケアレスミスとも思われない。
 また、「君形の」を「君系の」とか「キミ系の」とかと替える手もある、と私は思う。「系」とは勿論「シブヤ系」、「革新系」などの「系」である。
 「応用力が少し足りない」のではないでしょうか?
    〔答〕 キミ系の鋳型に嵌ったカレだから独立心がかなり足りない


(ウクレレ)
   髪型を変えたくらいで性格は変わらないって知っているけど

 そうは言いながら、髪形を変えたら、そこに劇的な出逢いが在るのではないか、などとも期待するから、女性は髪型を変えるのだそうだ。
    〔答〕 知ってても時折り変える髪型を1,000円カットはお手軽だから


(星野ぐりこ)           
   生き方をすっかり固められたまま立ちすくんでる型枠大工

 「型枠大工→コンクリート→固められた→立ちすくんでる」という連想ゲームから成り立つ一首。
 いつものことながら、<星野ぐりこ>さんは着想も見事だが、独特の軽さを、一貫として貫こうとする姿勢も見事である。
    〔答〕 行き方を固定したまま詠む姿勢 <ぐりこ>のままに詠む姿勢好し


(久哲)
   異なった花の鋳型のゆかしさの客が来てから掃除する妻

 一首全体、久哲さん流としか言えない独特の味わいを持つ一首である。
 格助詞「の」の三連発であるが、一発目と三発目の「の」は、連体修飾語を作る役割を果たす「の」であるが、二発目の「の」は比喩の「の」である。
 <比喩>の「の」とは、「・・・・・のような」「・・・・・のように」といった意味に訳される「の」である。
 短歌表現には、この「の」が意識的、無意識的に多用され、本作の場合も、この「の」の役割を文法的に理解しない限り、その解釈及び観賞は成り立たない、と思われる。
 それでは、この「の」の働きに留意しながら、この難解ホークスな作品の解釈と鑑賞を試みよう。
 この世にはさまざまな美しさの花があり、その花の美しさをファッションに採り入れるために、釦製造工場にはさまざまな花の形をした釦製造のための美しい鋳型がある。
 私の家には、その花の鋳型のようにいつまでも記憶に残りそうな美しいお客が訪ねて来たが、私の妻という人は、どういう了見なのか、そのお客が来てから、わざわざタイミングを計ったようにして掃除を始める、不思議な妻である。
 自作がこんな玄妙かつ魅力的な意味を備えた作品だとは、おそらく作者ご本人も理解されて居られないであろう。
 傑作の傑作たるを理解せずしてこの傑作を詠む。名人の名人たる所以なり。
    〔答〕 久哲の達人たるは久哲も理解し得ざるところなりけり 
        ボタン付けそれさえできぬ妻なれど客が来てから掃除はやれる


(かりやす)
   司書のわれに「いくつ?」と訊いてくる子等は血液型の本が好きなり

 お題・「型」を<血液型>の「型」として詠んだ作品は全体の四分の一にも及ぶ。私見によると、そうした作品は、予め知らされていた地雷原にわざわざ入り込んだようなものであり、案の定、これはと思えるようなものは、ただの一首も無かった。
 この駄作の山の中から辛うじて拾って来たのが本作である。
 本作の何処が優れているのかと問われても、私はその答に窮する。敢えて言うならば、本作は、血液型という語を作中に出しながら、血液型そのものを主題にしていない。そこのところが、本作のいい所と言えば、あまりにも皮肉に聞こえるだろうか。
    〔答〕 司書汝(なれ)に「年はいくつ?」と聞く子らはセクハラとふを知らぬ子らなり 
 

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