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一首を切り裂く(003:助)

(五十嵐きよみ)
   見るからに一癖ありげなまなざしの助演女優のほうに引かれる

 助演より主演の方がいいに決まっているが、日本映画華やかなりし頃、「私は最初から助演女優になるために映画界に飛び込んだ。主演女優になりたいなんて一度も思わなかったわ」と、ある女優が雑誌「平凡」に掲載された手記の中で語っていたが、未だ小娘にすぎなかった人生のある時点で、彼女は彼女なりに自分の顔や才能などと折り合いをつけたのだろうと思って、私は少し彼女のことが気の毒になった。だが、情報化社会の今日では、彼女のような女優は格別に珍しくはないだろう。
 と書いてはみたが、待てよ、昨今の我が国には芸能界は在っても映画界は無し。女性タレントは居ても女優は居ないか。
 既に名を成した五十嵐きよみさんの作品はなるべく採りたくないが、その安定した詠風には人をひきつける何かが在るので無視し難い。


(ぷよよん)
   いつだって主演女優はあなたでしょ助演でもらう賞はいらない

 「助演女優」あれこれ。
 一方に助演女優に惹かれる映画ファンが居れば、他方に主演女優に嫉妬する助演女優も居る。
 「いつだって主演女優はあなたでしょ助演でもらう賞はいらない 」とは、どなたのセリフでしょうか?  いや、間違いでした。これはセリフではなく、楽屋内での棄て台詞でした。


(久哲)
   背の低い助産婦歩く道筋の冬の桜の身の内の朱

 「朱」は<あか>と読むのだろう。
 「背の低い助産婦」という差別めいた表現が効いている。
 助産師が未だ助産婦と呼ばれていた頃、彼女たちの身長は決まって低かったし、また、その方が助産婦という職業に相応しいとさえ私は思っていた。
 その助産婦がやがて取り上げることになる胎児の「赤くて小さな命」と、「冬の桜の身の内の朱」との対比は、やがて生まれるはずの赤ちゃんとやがて咲くはずの桜の花との対比でもある。
 ここで私は一つ、この作品の作者の久哲さんに提案したい。
 この作品はこのままでも立派に完成されてはいますが、私は、これに少し手を入れて、「背の低い助産婦さんが見上げてる冬の桜の身の内の朱」としたら更によくなると思います。久哲さんのお考えはいかがでしょうか?


(minto)
   助産師はまだ定まらぬ頭を持ちて次から次へと沐浴をさす

 助産婦から助産師へとその呼び名は替わっても、彼女らは相変わらず小さくて力強い。
 生まれて間もない赤ちゃんの「まだ定まらぬ頭を持」って「次から次へと沐浴をさ」せる、彼女らこそ、少子化時代のストッパーに違いない。
 小さな身体で大きな働きの助産師さんは、<ハマの大魔人>なのだ。
 作中の<わたし>は助産師の驚異的な仕事振りに感嘆しているのだ。


(秋月あまね)
   ややあってはにかみながら私まだ独身ですと助産師が言う

 「ややあって」が絶妙。これ在ることに因って、妊産婦やその家族の人たちと助産師との間に交わされた会話の内容が彷彿として来る。
 語順及び言葉の運びも素晴らしい。お節介焼きの私は、「ややあってはにかみながら助産師が私は未だ独身よと言う」などなど、語順を弄くってはみたものの、原作以上にいいものは無かった。
 この作品は、お題「002:助」中の代表作品として評価されよう。
 この傑作を作られた<秋月あまね>さんに敬意を表して、私は、「秋月のあまねく射せばこの家の子らも孫らも憧れて見つ」などと三十一音を並べてみたが、秋月さんの作品と較べれば、所詮、「月とすっぽん」「提灯に釣鐘」。
 オッと、間違えないで欲しいが、「月とすっぽん」の「月」が秋月さんの作品で、「すっぽん」が私の作品だよ。私の作品の中ににも「月」が出て来るが、それは秋月さんに敬意を表するために借用させていただいたのだ。そんなことにも気が付かないあなたは、短歌を語る資格がない。
 それにしても、作中の助産師さんが、未だ独身なのは甚だ残念だ。「弘法も筆の誤り」、「医者の不養生」、「紺屋の白袴」、「灯台下暗し」。「助産師の独身」とまで申したら叱られるか?


(Re:)
   他の子を乗せないでなんて言えなくて位置をなおして座る助手席

 「位置をなおして座る」が泣かせる。
    〔答〕 他の子が直して座った助手席をさらに直して別の子が座る


(行方祐美)
   助手席の日面かるくゆらぎいつ無言とはさぞ欲深ならん

 陽射しに焙られてなのか、一言ももの言わない助手席の人。運転者にとっては、その「無言」が薄気味悪いのである。
    〔答〕 日面(ひおもて)のゆらぎはいくら軽くても座席に座る子の口重し


(布川イヅル)
   海へゆけば入水を気取る 助手席にフリッパーズ・ギターを置き去りにして

    〔答〕 山行かば遭難者気取り 助手席に擦り切れそうなザイルを残し


(しおり)
   鈍感であればいいのに助手席の微妙な角度の変化が辛し

    〔答〕 ハンドルを切り損ねたる運転手 助手席からのサイン気にして


(村木美月)
   独占はできないひとの助手席に残り香だけを忘れてしまう

    〔答〕 忘れ物は残り香だけと君は言うその残り香が命取りなの


(TIARA)
   助手席の窓に小さく残されたハートマークが暴かれるまで

    〔答〕 角角鹿鹿(かくかくしかじか)ありにけるかも。


(七五三ひな)
   「吾」という人生行路を行く車定員2名助手席は君

    〔答〕 こちらではでんと構えた助手席の人は座席の汚れ知らずも
 
 「助手席七態」でしたが、「一台に一個しかない助手席で恋の鞘当て女の修羅場」とは、私、鳥羽省三の旧作である。


(梅田啓子)
   弓なりのわが体(たい)越ゆる瞬間を思ひ描きて助走に入る

 走り高跳びですか。
 そう言えば、あの春日井建さんにありましたね。「火の剣のごとき夕陽に跳躍の青年一瞬血ぬられて飛ぶ」という名作が。あちらは棒高跳びでしょうが。
 今に亡き春日井建先生の代表作にケチをつけるようで申し訳ないが、春日井作は道具立てが大きく、装飾性・象徴性に富んでいるが、その反面、肉体感に乏しい。
 それに較べて、梅田作は肉体感覚バッチリである。
    〔答〕 超Lの乳房気になり跳べないのバーが落ちたらお仕舞いだから


(雪原うさぎ)
   助走距離 あとどのくらい伸ばしたら たどり着けるの 君の心に

    〔答〕 助走距離いくら伸ばせど届かない君と僕とは無限の距離だ
        雪原にうさぎ飛び出し捕らわれた間抜け兎で冬毛忘れた

(キャサリン)
   背を丸め助走ばかりの足を撫で坂本龍一のバガテルを聴く

    〔答〕 私にはこの作品が分らない 龍一の曲バガテル聴かねば
 でも、「背を丸め助走ばかりの足を撫で」だけで、「坂本龍一のバガテル」の内容が十分に分りそうな気もしますよね。


(月下 桜)
   下がるのは逃げなんかじゃない緩やかに助走してから跳躍するため

    〔答〕 これ以上下がると危険 フイールドで今始まったハンマー投げが
 とは詠んでみましたが、走り高跳びの行われるフィールドとハンマー投げの行われるフィールドとは十分な間隔がありますから、それほどの危険は無いようです。


(虫武一俊)
   こんなにもながくて暗い助走路をいったいどこの誰が決めたの

    〔答〕 助走路は長くなければなりません暗いと思うは君の主観さ

 「助手席七態」に続いて「助走五態」。「<題詠>は助走路でなし強張らず焦らず高く遠くまで跳べ」とは、私、鳥羽省三の新作である。


(新田瑛)
   補助輪を外してすぐの危うさに憧れ抱く少年だった

    〔答〕 補助輪を外して直ぐにふらふらと家を出たまま二度と帰らず


(ノサカ レイ)
   補助輪をすべてはずしたあの朝の光で発芽しちゃったあたし

    〔答〕 発芽には<光>と<水>ともう一つ適度な温度が必要ですよ


(ぱぴこ)
   いつの間に外されていた補助輪のうるさい安定もう戻らない

    〔答〕 うるさくも安定のため必要な親の干渉ふたつの補助輪

 七五三ということで、最後は「補助輪三態」でしたが、私は、今回皆さんの作品を読ませていただいたことに因って、補助輪があるのは子供用自転車だけとは限らないと知り、人はたいてい補助輪を外そうとしていることをも知りました。教えて下さった方々有難うございます。


(髭彦)
   <てにをは>が怪しきなどと憂ひつつ吾知らざりきその原義をば
   <てにをは>の助詞など指すを知りつつもけふまで知らずその原義をば

    〔答〕 「て・に・を・は」が最頻出の助詞だから「助詞」を総じて「てにをは」と言う


(伊藤真也)
   「生きてればそういうこともあるってば」助言のような呪文のような

    〔答〕 生きてればそういうこともあるってば。黙して聞くより仕方ないってば。
        生きてればそういうこともあるってば。助言ではなく嫌味だってば。


(本田あや)
   助けにはならないのです 泣き顔にくりかえされる口づけなんか

    〔答〕 清めてやる、清めてやると言いながら、そういう事する男が居るね
        清めてやる、清めてやると言いながら、そうする男は僕ではないよ


(岡本雅哉)
   ふり払う腕はつかんで欲しいのよ助けるのってそういうことよ

    〔答〕 ふり払う腕をつかめばつかんだで依怙地な貴女はまた振り払う
        岡ポンに捕まえられた腕よりも岡ポンの腕細かったりして

(穂ノ木芽央)
   思ひつくかぎりのことばならべかへこぼれた助詞のかなしさおもふ

    〔答〕 助詞は女子などに非ざるものなれば哀しさなどは知るはずもなし
        「てにをは」が悲しさを知るものならば「いろはにほへと」は恋をするらむ

(ウクレレ)
   気がつけば恋愛幇助ばかりして作り笑顔が得意になった

    〔答〕 ミイラ盗りがミイラになったの反対ね 作り笑顔が乾せてしまうぞ


(O.F.)
   救助!救助!アイス最中のひび割れの静かな被害三歳児姪

    〔答〕 了解!了解!アイス最中の救助隊、ただいま現場に急行中です。


(ゆら)
   梅が香に誘われ覗く助枝窓(したじまど) 花を見上げる君に恋した

    〔答〕 発端は風流心の発露だが結局最後は覗きになった


(末松さくや)
   補助線でがんじがらめになりながら正三角を描かされている

    〔答〕 補助線で雁字搦めに縛られた正三角形出来上がるとこ


(酒井景二朗)
   自分つて奴を半分塗りつぶす酒と莨の助けを借りて

    〔答〕 自宅って奴をあらかた食いつぶせ酒も煙草も止めないで居て

(拓哉人形)
   頼られてなんぼの俺は「助けて」をただひたすらに待つ。助けてよ

    〔答〕 「頼られてなんぼ」と言うは自負にして、依頼者無しは君の実力


(佐原みつる)
   助けなどいらない 春の坂道を転がってゆく林檎がひとつ

    〔答〕 転石は坂を転げて苔が生え林檎転げてドブに入るだけ


(西中眞二郎)
   助教授も助役もその名改まり新しき名に馴染めずにおり

    〔答〕 助教授をお助け教授と呼んだのはチャタレー夫人の伊藤整です


(伊藤夏人)
   「タスケテ」と言ったら僕が助けると思っているの? 5分待ってね

    〔答〕 気まぐれな君の言葉を真に受けて5分待ったら死んでしまった
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